ヴォランティア
アメリカってやるな!としばしば感心するのは、積極的且つ気軽にヴォランティアに勤しもうとするその精神です。自分が共感できて貢献したいと思う分野に、空いている時間や労力を充てるのはさして特別なことではないと思えるなんて、今までそういう気持ちにもなったことがない私からすれば、驚き以外の何物でもありません。
日本でもきちんと活動するヴォランティア団体が多く存在するのは承知していますが、どうしてもイメージがアメリカのそれとは異なりますよね。そのため、日本にいたときはなるべくヴォランティアとは距離を置いていたのも事実です。
そういうGive-and-Takeが基本精神で私利私欲の塊といっても過言ではない私が、このNYで日常生活の中で自然にヴォランティアに勤しむ知人・友人たちから良い影響を受け、そして縁があってそのヴォランティアになってしまいました。
場所はメトロポリタン美術館、通称はMET。訪問者は年間500万人以上で、17の常設展と30以上の特別展(9月時点)を誇るNYの観光スポットでもあります。私自身もここに来るたびに何らかの発見があるので月に3、4回は訪問していました。私の場合、やはり無料奉仕するなら好きな場所でないと続かないと思うので、METはその意味では最高の活動場所です。
担当は、MET本館入口にあるインフォーメーション・センターで日英仏3ヶ国語での案内係です。研修はこれからですが、一応、To-Doリストやチェック・リストと把握すべき内容をまとめたMETパッケージ資料との格闘で、ここ1、2か月は担当曜日でなくてもうろうろと探索することになるでしょう。
まぁ、改心したはずなのですが、それでも何かの特典があると更に活動にも力が入るもの!?METヴォランティアにももちろん特典がいくつかあります。例えば、入館料や館内のプログラム(レクチャー、コンサート)は無料。オーディオ・ガイド機も無料貸し出しが出来ます。その特典の中で思わず心の中で小さくガッツポーズをとったのは、休館日(月曜)にもヴォランティアを含む関係者には美術館が開放されること。来館者がいない比較的静かな美術館内をじっくり楽しめるなんて願ってもない機会だと思いませんか!?
さて、面接の時にアメリカらしいと一番驚いたのは、面接官がこのMETのポジショニングを「ニューヨーク市内屈指の集客を誇るアトラクション」と述べたこと。
日本や欧州では、名画、名作や歴史的建造物等は文化的資産と位置づけても、アトラクションという発想にはならないですよね。
でもそういう発想だからこそ、この美術館ではリピーターやファンの数を増やすためのあらゆる趣向を凝らし、ターゲット毎、テーマ毎に絞り込んで多彩な行事・プログラムを実施しています。芸術を扱う公的組織ではあるけれど、こういう側面にビジネス・センスを持ち込み、常により魅力的な美術館になるための客観的評価を続ける姿勢は見事です。
最後はMETのマスコット的な存在(一部、MET商品として販売)で親しまれているWilliamをご紹介します。当時カバはナイル河の凶暴な動物として人々にも恐れられていました。守護神のごとく副葬の役目を果たしていたようです。
このWilliam、ちっちゃいサイズで厳粛な墓守の役割を担う副葬品でありながら、思いっきり不機嫌で無愛想な顔つきが個人的に気に入っています。