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国連でのイベント

昼顔

通訳・翻訳者リレーブログ

国連総会が3月21日に制定している「国際人種差別撤廃デイ」(the International Day for the Elimination of Racial Discrimination)。ウィキペディアによると、1960年のこの日に南アフリカ共和国で人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対するデモ隊に向けて警官隊が発砲し、多数の死傷者を出す惨事が起こりました。これを機に人種差別に国連が積極的に取り組むようになったために制定された記念日なのです。

今年は少し早く16日に国連内で今一度、自らその機運を盛り上げようとあるイベントが実施されました。先日のアカデミー賞でも幾つかの部門でノミネートを果たしたクリント・イーストウッド監督『Invictus』(邦題「インビクタス/負けざる者たち」)が国連関係者を対象に会議室で上映され、またその後に同映画のプロデューサー等を招いて意見交換会が企画されました。しかも、冒頭には潘基文(パン・ギムン)国連事務総長がオープニング・スピーチを行うこともあり、主催部門の知り合いに聞いたところ、500名ほどは参加する見通しとのことでしたが、実際には400名程度が参加しました。

もちろん映画の筋をここで話してしまうわけにはいきませんが、ざっくりと書くと、南アフリカ共和国でのアパルトヘイトに一貫して反対する運動を繰り広げたネルソン・マンデラ。彼は政治犯として投獄されるも、開放された後の1994年に南ア大統領に就任しました。実質的には社会・経済的な格差はもちろん、気持ちの面でも人々は未だ分割されたままの状況。そんな新しい体制が生まれたばかりの95年に世界中が注目するラグビーのワールド・カップが南アで開催され、マンデラは不退転の決意で、ナショナル・ラグビー・チームのキャプテンと共に、ラグビーを通じ、国と国民の想いを一つにまとめていった実話が映画の基になっています。

もちろん映画の中にも国連が登場します。冒頭にも書きましたが、国連がこのアパルトヘイトを目の当たりにして初めて自ら取り組みを始めたようなものですから、当然と言えば当然ですが…。

ふと考えたら、私にとって今回が初めての生(!)パン・ギムン国連事務総長。よく思うのですが韓国人の話す英語は日本人にとってある意味分かりやすいですよね。事務総長の英語も例外ではなく、ゆっくりとした理解しやすい英語で、最初は国連のあるべき姿について熱く語っていたのですが、最後はちゃめっけたっぷりで「映画の中盤あたりにあなたたちの職場でよく知る人物が映っていると思います。お見逃しなく」なんておっしゃっていました。

最後に仮設の国連会議場の各代表団が座るテーブルと各国通訳ブースの外観の様子をどうぞご覧くださいませ。旧会議場で席に固定されたイヤホンは本当に旧式で、日本などではまずお目にかかれないぐらいの年代物でした。今度の装置はかなりグレード・アップされ、Bosch製です。これだとどんな音でも漏らさずに拾ってしまいそう。

きっと同通ブース内もかなり近代的になっているかもしれませんね。個人的には、早口のスピーカーに対しての「警告フラッシュ」など設置されると役立ちそうです。或いはスピーチ原稿を事前に提出していないスピーカーに「ブーイング」効果音と共に訳出をお届けするとか…。

さて、嬉しいことに昨年担当した国連ブースでの通訳案件で今年も声をかけていただきました。この経験を一度限りのものにはしたくない!と切望していたので、ホッとすると共に緊張してきたのも確か。去年以上のパフォーマンスが出来るように地道で地味な準備活動に勤しむしかないですね。機能が充実したブースがどんなになっているのか今から楽しみです。

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昼顔

外資系金融、在ジュネーブ日本政府代表部での勤務を経て、外務省職員として採用。帰国後は民間企業にてインハウス通訳者としてキャリアを積み、現在は日英仏フリーランス通訳者として活躍中。昨年秋からはNYに拠点を移す。趣味は数年前から再び始めたバレエと映画鑑賞と美味しいモノの食べ歩き。

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