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好きなことと得意なこと

仙人

通訳・翻訳者リレーブログ

先週に続いて、好き嫌いの話で恐縮ですが、自分の好き嫌いをしっかり認識するのは仕事をする上でとても大事だと思っています。
昔、勤務した会社で、あることを「無理です」と言ったら、「君のやる気がないからできないのか、やることの労力と予想しうる成果を比べて、実行することが無意味だと思うから、やってみないのか、どちらだ?」と聞かれて、「こんなの嫌いだからやりたくない」と答え、「よろしい、今の言葉を忘れるな」と言われたことがあります。不可能とは、おおむね私がやりたくないだけのことである。そういう教訓でした。私が不得意だと自分で思っていることは、ただ嫌いなだけ、のことであるようです。
日本語の曖昧さは叙情的なすばらしさを作る一方、主語が不明確で”I like it”を「いいですね」としたり、”I don’t want to do this”を「無理」で片付けたりします。他人に対して波風を立てないのはいいのですが、自分のこともごまかしてしまいがち。主語のないことの問題点は、物事を一般化して「みんなが」できないはず、みたいなニュアンスを持たせることで、好き嫌いのすり替えをすることだと思います。本当の原因から目をそらすのが簡単なのです。私はこれが嫌いと認識することで、手抜きの正当化や、努力をしないことの逃げの口実をなくせるのではないかと、少なくとも私は思っています。
それで、訳していておもしろくないなあと思うとき(って実は、結構多いんですよね)は、見直しの回数を多くするなど、気をつけて、と自分に言い聞かせるようにしています。すると、結構ほめていただくことになって、同じ分野の訳を続けていただき、そのうちに「得意」分野になっていたりします。そして、思いもかけない分野が「得意」とされてしまって、それはそれで悩んだりもする今日この頃なのでした。

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記事を書いた人

仙人

大学在学中に通訳者としての活動を開始。卒業後は、外資系消費財メーカーのマーケティング分野でキャリアアップ。その後、外資系企業のトップまでキャリアを極めた後、現在は、フリーランス翻訳者として活躍中。趣味は、「筋肉を大きくすることと読書」

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