翻訳者、不満のはけ口
文芸翻訳をしていて、あまりに単純な、原文での事実誤認があると、もんのすごっく、腹が立ちます。こないだ、仙人になって腹も立てなくなったなんて言ってたばかりですけど。作家にというより、原書の編集者に対する怒りのほうが大きくて、ちょっとインターネットの検索サイトにその語を打ち込めば、すぐにわかることを、何で調べてみないかなあ、と思うのです。どうも訳がしっくりこないなあ、おかしいなあ、つじつまが合わないなあと、必死に何時間も費やしていろんなことを調べたあと、どう考えても原文の間違いである、ということがわかったりしたときに、怒りは爆発——してる最中なんです、今! こうやって、この場で怒りを吐き出したりなんかして、ああ、本当に翻訳者のためのサイトだ……。
まあね、スナイパーが暗殺のときに、どういうライフルを使うか、どういう銃にどれぐらいの消音器をつけられるかは詳しくなりましたよ。きっと私の今後の人生に、非常に役立つことでしょう。暗殺するときには、弾道偏差とか計算したほういいみたいですよ、皆さん。怪我をさせるだけのときと、確実に殺そうというときとは、銃弾を変えてくださいね。
日本の読者は本筋に関係ないことだから、どうでもいいじゃん、とは見過ごしてくれないので、固有名詞などの間違いは、できるだけ直しておこうとするものの、そうすると全体で、だーっと変更しなければならないこともあり、間違っていると思いつつ、原文をそのまま表記することもあります。それで、昔なら翻訳作品を読んでいて、間違ってるじゃん、と思ったことも、今では、ああ、訳者は苦労したんだろうなあと、別の感情移入をしたりして。
それにしても、調べたサイト履歴の不穏なこと。何かのことで事件に巻き込まれて、チェックしたサイトの履歴とか調べられたりしたら、絶対テロリストだと思われるな。身の回りをクリーンにして暮らしていこうっと。