翻訳しゃっくり
最近かかることの多い「翻訳しゃっくり」は髪と瞳の色。さまざまに異なる民族が一緒に暮らす国では、その色についてのこだわりというか興味が、私たちより強いように思えます。登場人物の瞳の色にその人の性格などを反映させることも多く、しかもその色の概念がどうも、日本人のそれとは違っているようで、文字通りに訳すのはまずい、どうしよう、ひっく、ときてしまうのです。
まず、前にもどなたかが言っておられた気がするのですが、「茶髪」といえば日本語では染めた髪のことなのに、英語で一般的日本人の髪はdark brownと表現されます。それでdark brownとあるときは黒っぽい髪と訳すことが多くなるのですが、黒・茶でもbrunetteとか、auburnとか、「すてき」感があるときは、なんとなくですけどbrownとは言わない気もします。brownって、艶がなくて、ただのつまんない茶色よ、というときにこそ使うような。brunetteには白い肌とのコントラストも含まれる、たとえばブルック・シールズの感じで、そういうのに黒髪という訳をあてて東洋系の人をイメージされては困ります。なので他の部分で肌の色とか雰囲気をイメージできる言葉を加えることもあります。blackというのはめったにないですが、エキゾチック、野性味みたいなのが含まれるので、漆黒とか、闇のような深さのとか、少し補ったりするようにします。
結局、茶系の色の人ってやっぱり多くて、brownというと個性がない感じがするためか、いい感じの色のときは、chestnutの髪とか、瞳に関してはhazelとか、ちょっと特別な感じを出したいようです。そうそう、hazelを「ハシバミ色」とかいうのって、いまどきどうなんだ、とも思います。実際、榛とhazelは植物学的には近くても、結構違った木だし、なにより「はしばみ」なんていわれて、ああ、あの木ね「榛」と思う人より「ヘーゼルナッツ」がどういうものかぴんと来る人のほうが多いと思いません? 続く……