信じること
ボストン・レッドソックスの松坂選手が「メジャーリーグに行けないことなんて考えもしなかった。日本でプロになるときも、自分が通用しないと想像することはなかった。漠然と、自分はいずれプロの野球選手として活躍して、そのうちメジャーに行くんだと、固く信じていた」というようなことを語るインタビュー番組を見ました。まったく嫌味な感じではなく、純粋にそう思い込んでたんですよね、と話すのを見て、やっぱりなあ、と思いました。
少し前に、メジャーリーグに大改革をもたらしたと言われる、オ−クランド・アスレチクスのGM、ビリー・ビーン氏の成功を調べたノンフィクションに仕事で少し関わったことがあります。ビーン氏は高校のとき何十年にひとりの逸材として、どの球団も欲しがるようなスターとしてメジャー入りをしたのに、選手としてたいした成績も残せず引退した経歴があります。彼は周りの全員から「君はすごい才能がある」と言われても、自分ではメジャーで活躍できると思ったことが一度もなかったそうです。チームメイトに自分よりはるかに能力が劣る選手がいて、こんな才能のないやつが、よくメジャーに入団できたなと思っていても、その選手はメジャーで成功すると信じきっていて、何年か経つとその才能がないと思っていた選手が本当にスターになっていた、ということもあったそうです。
信じなければ続けられない努力、みたいなのがあるからだと、私は思います。どうせだめだろうと思いながらする「努力」と、きっと報われるはずと信じてする努力では、アウトプットに大きな差が出るのは当然でしょう。注意すべきなのは、「どうせ」と表立った積極的否定の態度を持つ人はほとんどいないだろうけれど、希望的に聞こえる「なれたらいいなあ」は、実は「でもきっと無理だよね」で終わることが多いことです。松坂選手には、これからの先のメジャーでの活躍も信じていてほしいです。
ビーン氏は、ビジネスでは成功することを信じていたそうです。そしてGMとしては誰が批判しても、自分の信じることをやって成功しました。オークランドでは、ビーン氏の手腕を疑問視する声が出たとき、アスレチクスのファンがBeanをもじって、”Believe in Billy Bean”運動というのをしたんですよ。