仕事の依頼は恋愛と同じ!?
フリーランスになると、仕事は、来るときもあれば、来ないときもあります。(厳しい現実。)今はおそらく一年の中でも比較的忙しい時期なのでしょう、とっても忙しいです。でもそれも、今手元にある依頼が終わった瞬間にどうなるかは、神のみぞが知ることです。こうした不安定な状態を数ヶ月まともに経験してみて、これはなんだか恋愛をしている時の心理状態に似ている、などとふと思ってしまいました。新しいエージェントに登録したときには、「私を気に入ってもらえるかしら」とドキドキ。どうやら気に入ってもらえたとしても、「仕事の依頼が来るかしら」とやきもき。しばらく依頼の続いていたクライアントが、ある日ぷっつりとうんともすんとも言ってこなくなると、「私何かまずいこと言ったかしら、あの言い方がいけなかったのかしら、こんなこと言うべきでなかったのかしら」と心配。そしてしばらくして何事もなかったようにそのエージェントから依頼が来れば、「やっぱり私のこと好きだったのね」とまるで天にも昇らんばかりの嬉しさ(正確には「好き」というのとは違うと思いますが)。さらに、提出した訳文も、クライアントの方にどこまで寄り添うべきか、それとも孤高を保って、「ここはこうでなくてはおかしいです!」と主張するべきか…。受け取る方にだって、性格も、好みもあります。翻訳者にお金を払って作業を行ってもらうからには、とにかく正確で、流暢な文章を書いてほしい、そのためには自分の原文の表現から多少はずれても良いと思う人から、どんなに翻訳者が言語面では専門だといっても、自分の仕事に関する表現は自分の色に染まってほしいと思う人まで。しかも、たいていはエージェントがワンクッションおいてくださるだけに、何かあったらお叱りがエージェントの方々の身に振りかかってしまうのは、本当に心苦しいばかりです。あぁ、これではまるで、ラブレターを渡して、と友人に頼んだら、その友人が「こんなもの今持ってくるな」と相手に怒鳴られてしまっているような、隔靴掻痒の気分。とはいえ、同じだけの分量や内容の仕事を個人で集めるのは到底不可能。こちらとしては、お頼り申し上げるしかないのです。本当を言えば、エージェントの方だってきっと、「同じ依頼するなら、本当はこの件、あの人にならぴったりと思ってたのに、あの人は手が空いてなくてタイミング悪い。仕方ないからこちらに依頼しよう」なんて思ってることだってあるに違いない。そうは絶対におっしゃらないけど…。これは仲人の心境にも似ていますね。片や最高条件の男性がいて、それに見合う女性が見つけられないもどかしさ。もちろん、逆に最高の組み合わせで喜ぶ場合もあるでしょう。かく言う私たち翻訳者だって、精一杯努力して完成させた訳文を、エージェントの方も、クライアントも手放しで喜んでくれると、本当に、まるで運命の人に出会ったかのような嬉しい気持ちになり、数日はふわふわと地面から浮いているような感覚になってしまうほどです。…ああ、気持ちの浮き沈みの激しい日々。だんだん逞しくなっていけるものなのでしょうか…。元々あまり動じないタイプのはずなんですがねぇ…。