嬉しい?誤算
これまで数社で社内翻訳者を務めた間も、そして在宅翻訳でも、一番多く受けているのが、何といってもコンピュータ関係の翻訳です。元々「超」が付く文系の私ですが、ユーザとしてはコンピュータは嫌いではないし、まぁ、それなりに使いこなせてるし、なんていう軽い気持ちで、翻訳の勉強をする際にコンピュータを専門分野の一つに指定していました。とはいえ、心のどこかで「翻訳=文章表現を巧みに操る作業」という意識があるせいか、単語の置き換えの正確さが最も要求されて、あまり翻訳者の文章能力が求められることのないコンピュータ関連のお仕事は、なんとはなしに邪道のような印象を抱いていました。もちろん、実際に翻訳に当たってみると、この業界の用語は日進月歩なので、その進歩についていっていなければ当然、自分が作成した訳文も「事情を知らない人が書いたシロウトくさい文章」になってしまうので、他のどの分野とも同様、日々勉強が必要なのですが…。
しかし、7月から本格的に在宅翻訳者になってみると、意外にもあまりコンピュータ関連の仕事の依頼は来ませんでした。そして、コンピュータ関連の仕事の依頼が来ていないこと自体すら、認識もしていなかったのです。そこへ先日、コンピュータのマニュアルの翻訳の依頼が大量に来ました。受けたときはあまり意識していなかったのですが、実際に作業を始めてみると、「あぁ、懐かしい。いつもこういうの、やってたなぁ。」と思っている自分がいます。おまけに、意外にも、他の分野の仕事に比べて筆(キー?)の進みが格段に速いのです! これは嬉しい誤算でした。なんだか、考えるそばからどんどん作業が進みます。普段なら、いろんな箇所でふと止まり、ちょっと調べてはまた作業に戻り、またちょっと進めると手を止めて、となってしまうのに、今回はぐんぐん進みます。最初はあまり意識せずに選択した専門分野の候補は、数年の時を経て確実に自分の中で勢力を拡大して、自分の身についていたのです。これから先、何日まともに寝られるか…と鬱々たる気持ちでいたのも、少し晴れやかになりました。納期までには一晩くらい、飲んじゃっても平気な日ができるかも! ついほくそ笑んでしまいます。