仕上がりは如何に
大量翻訳も大詰めになってまいりました。現在、合計356ページある原稿のうち、229ページ目までの翻訳が完了し、私としても後少しのラストスパート!という感が色濃くなってきています。今回しゃかりきになって翻訳しているうちに、以前職場の友人が言っていた台詞を思い出しました。それは、「仕事を依頼されるときには必ず、『時間』『品質』『値段』の内、二つまではお約束します、と伝えるの。つまり、『速く』『高品質』のものがほしければ、『値段』は高くなるし、『品質』は譲れないけれど『値段』もあまり出せないのであれば、『時間』は多少かかってしまいますよ、とね。」というもの。この台詞を言った女性は通翻訳者ではなくオーストリア人のシステムコンサルタントの女性でしたが、若いのに非常に優秀で、彼女の中での優先順位付けが如何にうまく機能しているかを物語っている一言だと感じたものです。私自身はと言えば、どんな依頼を請けようとも品質は妥協しないようにしたいという心がけではいますが、絶対的にかけられる時間が少なければ、やはりどうしてもチェックが行き届かないこともあります。値段に関しては一旦請けてしまえば関係なくなりますが、それでもやはりいただく対価が高い依頼の方が優先度が高くなってしまうのは、お支払いいただく方に対する誠意としてもむしろ当然の成り行きだと思います。この友人から得た3つの要素の教訓に加えて、私がもう一つ心がけているのは、依頼者に対して愛着を持つこと。エージェントや依頼元のクライアントによっては、メールでしかやり取りをしたことがなかったりして、つい関係が機械的になってしまうことも多々あります。それでも、少しでも相手の方とのやり取りの回数を増やして、お互いの人間性や置かれている環境を知り、果ては相手に対して「少しでも単なる翻訳以上の手助けになってあげたい!」と愛情を持つことで、限られた時間や資金の中でも求めるものが最大限得られるようにしたいと思うのです。そうすることで、「時間」「品質」「値段」のどれかが欠けても、結果としてはその埋め合わせができるようになっている場合が多い気がします。機械が翻訳するのではなく人が翻訳するからには、こうした人対人ならではの利点があってこそ、だと思いたいのです。
話は変わって、今回の大量翻訳の依頼、死蔵していたTRADOSを復活させて利用したところ、格段に効率が上がって、順調に筆(キー?)を進められるようになりました! 過去の投資が今生きていて、嬉しい限りです。機械もまた、人の作業を手助けするためのものとしての存在価値は大ですね。