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十年一昔

パンの笛

通訳・翻訳者リレーブログ

 最近パスポートを更新しました。今までパスポートを改めて見るなんてことはしたことがなかったのに、新しいパスポートが来るまでの間はつい古いパスポートをじっくり見返したりもしました。ページをめくって押されているスタンプを見れば、思い出されるあの場所、あの友人。当時のことが、まるで昨日のことのように脳裏によみがえります。でも、十年と言う年月は頭で考えているよりもずっと長く、前のパスポートを取った頃の私はまだOLをしていて、もちろん独身でしたし、将来翻訳の仕事をするようになるなんてことも想像もつかない状態にありました。そして、古いパスポートに刻印されているスタンプの多さに、我ながら驚いてしまいます。でも極めつけとも言えるほどに驚いたのは、新しいパスポートが来て写真を比較したときです。外見もそんなに変わっていないつもりでいたのに、それは完全な独りよがりだったことが(残念ながら)わかりました。うーん、年月は正直です。
 客観的には長い長い十年も、私本人の認識の中ではあっという間の出来事でした。年長者は誰もが言うことですが、時間の経過の早さは加速度的に早く感じるようになっています。それとは対照的に、現在七歳の息子などを見ていると、私があたふたと過ごしている短い一日も、この子にとってはとてつもなく長い一日に感じているんだろうな、というのが想像されます。私も子供の頃はすべてが今の倍以上の長さの時間感覚を伴って行われていました。これは常々私が思っていることですが、ある人にとっての時間の経過の早さの感覚は、その人のそれまでの全人生に占めるうちの、対象の時間の比率の問題なのではないかと思うのです。つまり、まだたった七年しか生きていない息子にとっての一日と、○○年生きてきた私にとっての一日では、全体に占める割合がはるかに違います。年を追うごとにその比率が縮まるのも、ナットクではないかと思うのです。もうすぐ息子も夏休みです。息子にとっての長い長い一日、長い長〜い夏休みを、思い出深い、有意義なものにしてあげられるよう、そして同時に私も仕事にも精一杯励めるよう、工夫が必要そうです。

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記事を書いた人

パンの笛

幼少時に英国に滞在。数年の会社勤めを経て、出産後の仕事復帰を機に翻訳を本格的に学習。現在はフリーランスの在宅翻訳者。お酒好きで人好き、おしゃべり好きの一児の母。

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