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ドリトル先生再び

パンの笛

通訳・翻訳者リレーブログ

 最近はまっているのが、ドリトル先生シリーズ。先日私の子供の頃の家を処分したときに出てきた全12巻を譲り受けていたのが、書斎の本棚でどーんとその存在を主張しているのが目に入ったのです。子供の頃に一度読んではいたものの、当時は巻数の多さにちょっとひるんで、3巻目あたりからは斜め読みで済ませてしまったような記憶もあります。でも、大人になってから読み直してみたら、その新鮮な面白さに感動もひとしおです。奇想天外な内容ながらも、「ドリトル先生ワールド」は読む者に説得力をもって迫ってきます。あひるのダブダブや豚のガブガブの会話は、まるですぐ聞こえてくるかのようです。ドリトル先生の次なる台詞がまるで想像できるかのようです。そして、何と言ってもその言葉遣いがとても優しく穏やかで、良心的。もちろん、この作品が翻訳された頃の時代背景もあるとは思います(確認したら、一巻目の『ドリトル先生アフリカゆき』は昭和16年に初めて出版されていました)。でも、それだけではなく、翻訳をした井伏鱒二さんと下訳をした石井桃子さんが、工夫をし、配慮をして言葉を選んでいるのが手に取るようにわかるのです。長く読み継がれる本は、おそらくドリトル先生のように、中身が時代を選ばず普遍的に面白く、なおかつその文章が本質的な言葉の美しさを保っていて、どんな年代の読者でもすんなり読めることが必須条件なのでしょう。こういう本は、読んでいて心と文章表現の肥やしとなって、さらには楽しい気分を得られて、子供の頃の気持ちも思い出したりして、一挙両得どころか三得、四得の、なんとも価値の高い本だと感じました。今回は子供の頃と違って、きちんと12巻まで読み通したいと思います。
 ところで、今年一年で100冊読書の目標、現時点でぴったり90冊目です。あと1ヶ月で頑張って10冊!! ラストスパートですネ。年の締めくくりには、心に残る本を読みたい、と今から最後の本選びをしています。

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記事を書いた人

パンの笛

幼少時に英国に滞在。数年の会社勤めを経て、出産後の仕事復帰を機に翻訳を本格的に学習。現在はフリーランスの在宅翻訳者。お酒好きで人好き、おしゃべり好きの一児の母。

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