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ご褒美あるいは今後のさらなる課題

トナカイ

通訳・翻訳者リレーブログ

今週は驚くことが一つありました。筆者がこちらで会員になっている、フィンランドと某国(非常に狭い世界のため、匿名ブログで国名を出すのは控えさせていただきます・・・)間の友好協会のセクレタリー女史から、突然「おめでとう!」との興奮メール。いったい何かと思ってメールを開けてみると、数年前、かつてインターン勤務していた芸術団体が主催した国際会議で講演をしてくださったその国出身のゲストの方が、ご自分の最新の著書の中で当時を振り返り、私の名前を出しているというのです。
この著者の方、現地では哲学者、文化・社会評論家、大学教授・・・などとして知られる文化人で、昨年まで現地国営放送の討論番組の企画と司会を自ら務めていたため全国区の知名度があり、数年前には欧州委員会から表彰された経歴をもち、昨年からは欧州自由民主同盟(ALDE)のメンバーとして欧州議会でも活躍中・・・という、なぜ私ごときがこのような方とお近づきになることができたのかが不思議ともいえるような方なのであります。
それでもネット上での言論活動なども盛んに行っておられ、Facebookのお友達(笑)でもあるので、新刊が出たことは知ってはいたものの、まさかそこに自分の名前があるとは・・・
友好協会の会長のためにセクレタリー女史が現地から持ち帰ってきた本の現物があるというので、さっそく協会の事務所に。現地の言語に英語の対訳と詩的な写真がついたハードカバーの大型本がそこにありました。そして該当部分を見ると、ヘルシンキ滞在中の体験の一つとして、その言語を流暢に話す日本人通翻訳者との出会い、自分が会議で行った講演の内容をその日本人がまとめ、友好協会の機関紙で紹介したことなどが確かにあげられていました。
自分にとって語学力とはいわば(もはや)商売道具である一方、自分の語学力の現実も自分自身が一番よく知っている?だけに、なまじこのような褒め言葉をいただくと「誰でも本当にこのように思ってくれるだろうか?」ということがまず頭をよぎります。実際、当時を思い起こすだけでも、この会議は団体創立記念の年に開催されたものだったため規模が大きく、自分にとってはあまりにも接点がなさすぎる、あまりにも偉すぎる方ばかりが世界各地、それも大半が欧米諸国から出席していました。それまで、そんなゲストにホストとして対応したことがなかった自分はすっかりビビッており、スタッフとしての仕事ぶりは相当に未熟なものだったはずです(もっとも、この時の苦い経験が、資格取得などの勉強を始めるきっかけの一つともなったのですが・・・)。
そうした意味では、自分の能力に対して厳しい自己評価を忘れず、かつ厳正な評価にさらされることも恐れずにいたいと思うのです。しかし、そんな当時の自分さえこのように書いていただいたことで、自分が社会に育てられていることも強く実感しますし、前に進んでいくための大きな後押しをいただいた気もちになったのも確かです。そして、この方にとって後々まで記憶に残る滞在となったことを改めて知ることができたのは、何よりもうれしいことでした。本にまで残していただいたような美麗なコメントに真にかなった自分になっていきたいということ、そして一期一会の大切さも改めて身にしみた出来事でした。

Written by

記事を書いた人

トナカイ

フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。

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