BLOG&NEWS

ジャングル生活

ガットパルド(gattopardo)

通訳・翻訳者リレーブログ

去年から今年にかけて長期で海外に出かけていたのがまずかった。帰国するなり私用公用の波に呑まれ、スーツケースも解かぬまま春一番。やっとの思いで写真だけ整理したら、もう桜が咲いていました。あれよあれよというまにゴールデンウィーク、え、もう梅雨???
と、いうわけで、私の部屋はまるでジャングルのようです。今年後半の目標は、このジャングルをパリのホテル・リッツのスイートのような瀟洒な空間に変身させること。きーめた!
「整理整頓は仕事の基本」と、ちょ〜厳しかった小学校の担任の先生にたたき込まれたりしたせいか、部屋が乱雑というだけで罪悪感がおこる。でもふっと、そんな「けしからん空間」でどのくらいの仕事ができるか考えてみる。たとえば今日はヨーロッパの工業製品メーカーにメンドウクサイ注文書を2通、英訳してメールで送信。そのあとでフランス語の契約書を解読、でも難しすぎて2時間ねばったところで挫折、明日にもちこし。ちかぢか海外旅行に行く友人のためネットでのホテルの予約など代行してあげる。イタリアの某企業の社長からは「取引先との話、進んでるか?」との催促メール、「そう焦るなよ、日本はまだ連休気分から抜け出てないんだから」と返信。パソコンと机の回りさえどうにか整っていれば、これだけ「日銭かせぎ」ができるのね。でも、こういうやり方に慣れてしまうのは危険かも。
その昔、マレーネ・デートリッヒ主演「嘆きの天使」という映画があって、独身中年の高校の先生が若い踊り子に恋する悲劇なんだけれど、この先生が、100年の習慣を崩さぬがごとく、目覚めてすでにきちっと服を着込み、女中さんが簡素で清潔な食器で運んでくる朝食セットのコーヒーに、己の動作を愛おしむかのように砂糖を入れてかき混ぜて飲む・・・ああ、なんと折り目正しくすがすがしい朝のシーン・・・というところから物語が始まる。
ああいう地道で謙虚に生産的な日々、というのは私のあこがれなんだけれど、いつまでたってもそういう自分が見えてこない。
思えばあれはドイツ映画で、私はいまだにドイツ語ではなく、フランス語やイタリア語と戯れているのでした。

Written by

記事を書いた人

ガットパルド(gattopardo)

伊・仏・英語通翻訳、ナレーション、講師など、幅広い分野において活動中のパワフルウーマン。著書も多数。毎年バカンスはヨーロッパで!

END