優雅なりプロの技
みなさんこんにちは。
今週は仕事関係の食事会で印象的なできごとがありました。社団法人日本ソムリエ協会の関係者の方々との内輪の集まりです。場所は都内の某ビストロ。私の席のとなりには現副会長の岡昌治氏。
岡ソムリエは、歴代のアメリカ大統領やゴルバチョフ旧ソ連大統領夫妻などに、公式晩餐会の席でワインをサービスしたという輝かしい経歴の持ち主です。その集まりで初めて岡氏に会ったという、業界で後輩にあたるある男性は、感激して握手を求めたりしていました。
さて、会が進み、おつまみ式に和洋折衷のお皿がいろいろ供される中、全員アルコールも回った頃に、丸い平皿に載ったオムライスが運ばれてきました。ご飯の上にフワフワした分厚いオムレツ、さらにデミグラスソースがたっぷりかかっています。すごくおいしそう・・・しかし、なんとなく、みながどうやって取り分けたものかとためらっていると、岡さんがすっとその大皿に手を伸ばし、大ぶりのスプーンとフォークを使ってこの「かに玉状態のオムライス」をひとりひとりの小皿に分け始めました。このとき満座の話題はかなり盛り上っており、岡さんは中心となって話をリードする立場。自分のしゃべりを止めず、複数の人たちの話に耳も傾けながらのアクションです。隣で見ていた私は思わず目を疑ってしまいましたが、このオムライスがあたかもあらかじめ切れ目の入ったピザのように、すっすっすっと、一瞬のうちに6名の小皿に文字通り「等分」され、卵も、ソースも、まったく公平に同じ分量に分配されていきます。あっという間に作業終了。もとの大皿に目をやると、そこにはご飯の一粒も残っていません。これには驚きました。
飲み会で盛り上り「もうこの後は、直箸でいいよね〜〜〜。」と遠くの料理に無理矢理腕を伸ばし、テーブルの上にボロボロ食べ物をこぼしているいつもの私。たまにちょっとは緊張して人様の分まで取り分けてあげたりしても、そして無言で集中してやっても絶対、結果を見て「あ、私のがいちばん多かった・・・」と思うに決まってる私。岡さんのこの所作にはまったくもって「目が点」。
これが、長年の経験に裏打ちされた「プロの技」なのですね。
お皿の料理を取り分けるという、誰でもふだんやっている行為。それを、ここまでエレガントに、すばやく、きちんとこなす。サービスの極意を垣間見た気がしました。
私の外国語も、かくありたいものです。私は自他共に認めるボキャブラリー不足の文法不確実通訳なのですが、せめて「だれでも知っている方法」を、最高に優雅に使いこなせるようにはなりたい・・・そんな野望をかき立てられた食事会でした。
ところで、ホテル・リッツ計画ですが、今回は若干のファイリングが進んだのみ。クライアントごとにまとめてある50冊近いファイルを(稼働してないのがほとんどだけど)、ものによっては数年ぶりにひっくり返していますが、これが終了すれば私のオフィスはかなりシェイプアップされるはずです。数週間はかかるかな、この調子だと。