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世界のカリスマ - 先週のつづき

ガットパルド(gattopardo)

通訳・翻訳者リレーブログ

さて、某マエストロへのインタビューが始まる。
その語り口は音楽家というよりは大学の先生のそれ。事前に雑誌の記者からインタビューする内容を聞かされていたけれど、キャリア的に転機を迎えているこのマエストロの進退に関する質問などもあり、記者本人も私も「インタビュー嫌い」で通っている彼がどのくらい答えてくれるかが不安だった。
クラシック音楽やオペラに携わる人物へのインタビューでは、本人の意志に反して、宣伝目的で劇場やエージェントがインタビューを受けさせることもままあり、乗り気でないアーティストの口から面白い内容のコメントを搾り出すのに一苦労、ということもあるのだ。自分の仕事の内容にプライドがある人ほど、程度の低い(と、本人が思い込んでいる)宣伝企画には乗りたがらないから、そういうときの通訳は頭が痛い。今日のテキは果たして?
・・・が、ここでもまた驚かされる。
マエストロ、淡々と、しかし、充分に冗舌である。まるで長い時間構想を練って書き上げた原稿をそらで読むような、確信のある、滑らかな、知的は言葉運びだ。通訳しやすいことこの上ない。ありがたい!
前日に前もって伝えておいた質問のリストにちゃんと目を通して、適切な応答を考えておいたに違いない。そこには、たとえ自分のためであれ、自分を媒体として利益を得ている多くの関係知己のためであれ、「インタビューを引き受けた以上は、完璧に、最大限意味のあるものに」しようとする姿勢が見える。真面目さが伝わってくる。
かといって熱血漢ではない。まったく逆で、冷静なことこの上ない。そして、記者の顔を見、通訳の私の目を見ながら、センテンスを短めに区切ってしゃべる。通訳された文が長くなりすぎることから起こる、「日本語の細部に甘さが出てしまう危険」を回避しようという、細心さと意図とが伺われる。
こういう注意は、最終的にはマエストロ本人の人気を上げることに役立つとは思うが、彼がそれを第一目的にしているとは思えない。彼には1時間弱のインタビューも「完璧に自分のスタイルで表現するべき仕事」なのだ。ただそこに、依頼してきた側の意図を汲めるようにとの、深い気遣いが伺える。
やはり、世界の一流と言われる人物なのだ、こういうところも、と実感した。
写真撮影も含め、予定時間きっかりに終了。お別れに握手をすると、落ち着いた、しかし、突き刺すような目で私と記者とに挨拶をくれ、骨が折れるかと思うほど強く手を握られ「すばらしいイタリア語でしたよ、どうもありがとう。」と言う。恐れ多くて縮み上がってしまった。
指揮台の上では大きく見えるが、実際は、小柄な人物でした。しかしあの目の光。一生忘れないでしょう。
私自身が通訳をするにあたって、細部注意を払ったポイントなどもいろいろあるのだけど、そのことを書くとどうしても言葉の内容に触れてしまうし、それにまだ「強烈に眠いぞ WEEK」が終わってないので、この話、すみませんがこの辺までにします。
さてここで、ちょっと仮眠をとってから、また夜なべで翻訳です、明日の朝が締切りだあ〜〜・・・!!

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記事を書いた人

ガットパルド(gattopardo)

伊・仏・英語通翻訳、ナレーション、講師など、幅広い分野において活動中のパワフルウーマン。著書も多数。毎年バカンスはヨーロッパで!

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