ジビエの季節
食欲の秋。
スポーツの秋、文化の秋、は、とりあえず、あとまわし。まずは、食欲。
最近は日本でも「ジビエ」という言葉を言ってすんなり通じることが多くなった。秋、狩猟解禁になってから食べられる鳥獣肉のことですが。
まあ、秋といえばボジョレー・ヌーヴォー解禁日、というのも日本ですっかり定着したけど、本来、ジビエの料理に合わせるにはヌーヴォーよりも普通の、しっかりしたワインのほうがいい。
と、いきなりグルメ談義。
先日、都内某所の穴場的な風情のレストランで、とってもおいしいジビエとワインを食したもので。言語中枢と食欲中枢がクロスオーバー中です。
しかし。私が中学・高校のころ、翻訳書でフランス文学を読みふけってた頃には、文章の中に出てくる食べ物や飲み物の名前なんて、日本で見たことも聞いたこともないようなものばかりで、小説の場面を想像してみてもどうにもテーブルの上に載せるべき絵図がよくわかんない・・・って感じでしたが、今となっては「こういう日本語にしちゃったら、実際の料理法とちがって聞こえるじゃ〜ん。」なんて、当時の翻訳書の翻訳ミスまで指摘できちゃうんだから、時代の流れは恐いですね。
しかし、明治時代の文学者諸先生方は、まあ、国費で留学したような人もいたことはいただろうけど、現在に比べればごくごく少ない情報しかなかった時代に、よくあれだけ達者に翻訳したものです。それに比して、自身の怠惰の甚だしさに恥じ入る次第。
ところで、私がフランス料理のレストランのよしあしを判断する時に基準にしてるのは、仔羊肉のステーキと、食後のチーズと、それに合わせるワインのセレクションが的を得ているかどうか、という3項目があります。
どうも、長年あっちこっちで、自分のお金で人の財布で、胃袋の欲求のおもむくまま、気の向くままに食べつづけて確立された基準がこれ(あ、ちなみに仔羊はジビエではありませんよ)。
偏見に満ち満ちていると笑いたければ笑って下さい。
でもほんと、ヒツジとチーズと赤ワイン、この三つ巴で上位にランクインする店は、なぜか店の雰囲気も例外なくよくって、それなのに値段も良心的、という結果になる。
どっかの有名化粧品メーカーが「効能は正直に言って科学的に立証されていません。でも、お客さまからいただく声で、当社の製品のクオリティは保証されています。」というのがあった。
マイ・ミシュランも同様。なにがどうかって、因果関係はわかりませんが、とにかく試してみて。ヒツジとチーズとワインのチョイス。これがよければすべてよし、なのよ、なぜか。
さあ、今週はどこの店を狙おうかな。
天高く、山猫(ガットパルド)も肥ゆる秋。ああ、しあわせ。