春近し
・・・というタイトルと、本文とは、特に関係ないです。
今日の私の、ふとした感覚。気温は上下しててももう、空気の色は春ですね〜。
日本は四季折々の美しさがある国・・・とか、言い古されたフレーズだけどね、東京になんか住んでると、生活のちょっとした瞬間に「あ〜。春だア。」とか感慨深くなることはあっても、ある種圧倒的な自然のボリュームでもって季節を感じるような事はね、まあ、ありませんね。でも、ま、とにかく、体が感知しているのはやはり「春」だなあ。
・・・なんて、どうでもいいことを書いてしまいました。
さてと。
どうもここのところ、私の日記を読んでも「あ、このひと、通訳なんだな」とわかるような記述がなにもないことに恥じ入り、今日は、仕事のことでも書こうかと。
ごく最近、ふたたびテレインタビュアーと化して、イギリス人とフランス人、2人の男性バレエダンサーに立て続けに電話インタビューをしました。2人のお名前は伏せさせていただきますが、目下世界が注目の、人気トップ2と言ってもいいひとたちで、バレエ・ファンなら叫び声を上げてしまうかも知れないメンツ。
しかし、たとえ自宅の電話に接続した録音機を通して、彼らの「なまボイス」を聞く幸運にあやかろうとも、クライアントが極秘で教えてくれた彼らの携帯電話番号をいずれ悪用しようと思えばいくらでも、という境遇にあっても、ここで私までが生つばをたらしては「プロの通訳」の名がすたる。
というわけで、身を引き締めて質問をなげかけ、彼らの口から、某雑誌に掲載するべく身辺の最新情報をとっていく。
しかし、まあ、それにしても。
この、海峡を隔てて隣の2国のお国柄の違いたるや、トップクラスのアーティストの人柄にまで、如実に現れていると言っていいかも知れない。
イギリス人のほうは、若いながら非常に落ち着いた空気が伝わってき、淡々とした口調でこちらの質問に答え、疑問があれば自分から内容の細部を確認して納得するまで、言葉をやみくもに続けようとはしない。質問の意図を最大限真面目に汲み取ろうとする。少しでも華やかな記事にするためにこちらが「おだてる作戦」にでても、乗ってこない。「そんなことはありませんよ。」とか「それは解釈が違いますよ。」と、逆に諭されてしまう。
対するフランス人は、某国立劇場の最高位に昇進したばかりの若手で、なんとまあ、多弁・雄弁・早口・うるさい。この劇場の付属学校では、肉体的な鍛練だけでなく、言語による自己PRまで徹底教育されるのね、と思わせるに十分。こちらの質問のアタマだけ聞いて、速攻で返答を始め、論旨が多少ずれていようといまいとおかまいなしで常人の3倍の語彙を駆使してしゃべり(あとでテープを起こすのがたいへんじゃ〜)、ひとつの質問に対する答えにみごとに「起承転結・ぼくってこうなの」というスタイルを盛り込んでしゃべる。さすがというか、もうどうでもいいよ!というか。
もちろん、たまたま極端に違うタイプの2人だった、とも言えますよ。
しかし、百年戦争するはずだわな、これじゃあねえ。合うわけがないわ、こういうキャラ同士では・・・とね、あらためて、思うわけ。
そして、白タイツを履いて王子さまの役を踊れば、彼らの言語特性の違いなどファンには見えないわけなのよね。さあて、どの程度、そこいらへんまでバレちゃう日本語に直すべきか? これはこれで、けっこうアタマの痛い仕事なのです。