都内某所で開催される美術展の開会式に出席するため、イタリアのカンパーニア州政府観光局から、代表団がやってくる。
東京に滞在して、その展覧会の視察やら、その他もろもろの外交・宣伝活動に従事するあいだ、つきそいを頼まれた。
前にも書いたけど、このコテコテの「南イタリア」人種って、ほんっと、大変。心からの親愛の情を込めてだけど、あえて言うわ：「むっちゃくっちゃ大変よ、あんたたちって！！！」
なにせ、ものごとの段取り決定がすべてぎりぎり。でもそれがあたりまえ。こちらは、最速最短距離・最大効果を狙い撃ちするやりかたで、その期待に応えなければならない。「むちゃ言うなよ〜！！！」という嘆きがきかない代わり、バシ〜ッと的を射ぬくようにヘルプしてあげた時に受ける評価の高さと親愛の情には、並々ならぬものがある。まさに、猪突猛進、信じるが勝ち、熱きハートの人々である。
私にもろもろの連絡を入れてくるＮ氏によれば、１週間の滞在期間中、公式の行事はほとんど夕方から夜に集中。日中、かれらは「ヒマ」。今回は、デレゲーションにいわゆる「お偉いさん」が数名同行するので、成田への出迎えは「高級車で」と言われる。
ハイヤー会社をかたっぱしから調べ、キャディラック、リンカーンのミニバンを所有する某ハイヤー会社に決定。げげ〜っ、こんなハイヤー使うの、初めてだよ。
昼食時のレストランに相応しいところをセレクトし、リストにしておけ・・・ハイハイ、自分の予算では一生行けないようなところばっかり、調べに調べて「決定版」リストにしちゃうもん。どうせそういうところに同行して一緒に食べさせてもらえても、超おしゃべりな集団の通訳がてらの食事となると、料理の半分も食べられればいいほう。通訳の宿命ですな。でもまあ、レストランの雰囲気を知るだけでも有意義、と、自分をなぐさめ、とにかく自分が行ってみたいところを並べてしまった。
次、お偉いさんが「温泉を体験してみたい、指圧やハリ治療で疲れを取りたいと言い出した場合にそなえ、適当な場所を調べておくように。」
あのさあ。芸能人のマネージャーじゃないんだぜえ！！と思いつつ、ネット、雑誌、口コミで、徹底調査してしまうわたし。
こんなふうに人のためにいろいろ調べたことが、後日自分に役立つ情報になることは多い。なにごとも手を抜かず、誠心誠意。でもやっぱ、疲れるわあ。
準備段階でこれだけ要求が多いのだから、実際に到着して顔を合わせたら、どんなオプション要求を突きつけれるかわかったもんではないけど。まあ、いっか。彼らとのつきあいも過去数回を数え、こっちもなれてきたことだし。
ひとつだけ、この集団のいいところは「金に糸目をつけない」こと。・・・って「湯水のごとく」お金を使う、ということではなくってね。あれを調べろ、これを用意しろ、って言われた時に「ただし、かくかくしかじかの予算でおさめてくれ。」と最後に言われるのが、じつはいっちばん大変。でも、このクライアントは、私が「そこまでいろいろ言うんだったら、いくらいくら以下の値段じゃあ、ゼッタイ無理だよ！！」と虎のように叫ぶ声に「よっしゃ、わかった！内容優先、金は出す！」という姿勢なのがありがたい。
しかし、ふと考えると、いったいどこがこの「潤沢な資金」の出どころなのか。
ああ。南イタリア。突き詰めて想像してみると、ちょっと、足がすくむ。「お前ももう、仲間だからな。」と言われる日も近いのかも。ガットパルドの運命、だれぞ知る。
それでは、キャディラックのミニバンの乗り心地は、来週ご報告いたします。