あれよあれよというまに
ゴールデンウィークですね。
テレビでは毎度おなじみ旅行客でごった返す成田空港、渋滞する高速道路の映像。国が平和なのはいいことです、つくづく。
さて、みなさま。乗りましたですよ、キャディラックのミニバン。しかし、ナポリ軍団を相手にすると、必ずオチがつく。軍団到着を待つために朝の8時に成田で待機。キャディラックの運転手さんとも現地待ち合わせ。ところが、いきなり携帯電話が鳴る。なんと深夜のローマから。軍団の事務局長がほとんど泣き声で「機体調整まちで足止めをくっている、到着は予定よりまるまる1日遅れになる見込み。すまない!」ひょええええええええ!すんごいクルマが待ってるんだぜえ、どうしてくれんの?? と思わず電話口で叫んでしまったけど、どうすることもできない。運転手さんに事情を話し「あのう・・・そんなわけで今日はもう、クルマの必要がなくなったんですけど・・・私一人だけ乗せていただいて、都心まで送っていただいてもいいですか?」とたずねると「いいですよ、どうせ車庫まで戻るので、同じことですから。」とのお返事。ヤッタ!
しかし・・・乗ってみてオドロキ。全革張りの内装、6人分の座席が中心を向いてテーブルを囲むような配置でしつらえてあり、キャビネットにモエ・エ・シャンドンのボトルが冷えている。グラスが10客ほど・・・よく見るとなんとバカラ。そしてそして・・・黒いスーツで身を固めたバイリンガル運転手さんは、よくよく見ると、超イケメン!
こんな至福があっていいのかと、目をシロクロさせながら、成田空港から新宿駅西口まで、白塗り、タテヨコの比率が筆箱みたいなキャディラックに乗って戻ってまいりました。ドトールコーヒーのわきから小路に入り、ヨドバシカメラの角を通過するあたりでは、道の両脇の歩行者全員の注目の的。が、中からは見えても外からは見えない、あの窓ガラス。なんとも、奇妙にリッチな・・・というか、なんで自分はシルクのイブニングドレスに毛皮を纏っていないのか、そして、空いてる5席になんで美男がいないのか、などと、寝不足だったせいもあって、身の程知らずな想像に脳が空中浮遊するような気分でした。
さて、軍団は翌日無事到着。美術展のオープニング出席から関係各機関への表敬訪問、観光プロモーション企画の打ち合わせ、等々、目の回るような5日間。そしてその間に、彼らのあのおそろしい南イタリアのアクセントがすっかり伝染してしまい、「美しき標準イタリア語」を自負していた私の発音は、こともなげに単語の語尾をすべてだらしなくちょんぎってしゃべる、あの「南部弁」になりかわり・・・とにもかくにも彼らを帰路の飛行機にのせ、こんどはひとりジミ〜に空港リムジンで帰宅し、平均睡眠時間3時間の日々を償うべく自宅でベッドに倒れ込んだとたんに電話。
まったく別のクライアントから、急に明日、パリ・オペラ座のバレリーナの通訳をして欲しいと依頼が入る。
次の日、クラクラする頭をかかえ、指定の場所に出かけると、まあまあ、この世のものとは思えないような長身の美女が、玉を転がすような可憐な声でフランス語で話しかけてくるではないですか。なんとも、愉快きわまりない他言語通訳業ではあるけれど、もう頭がついていきませんわ。
キャディラックにはじまり、おとぎの国のお姫さまに終わった1週間でした。