初夏のパリ
「今年はいつまでも寒くって・・・」と現地の友人から直前まで脅かされていたのがウソのような、太陽、快晴、真夏の暑さ続きだったパリ。
この町とのつきあいは、直接知り合う前も、知り合った後も、長〜く、濃い〜ものが続いている。いろんな顔を知っているが、そして、世間一般には「これは、あいつのイヤな顔」とされている表情もいくつも見ているけれど、私はそのどれも、嫌いではない・・・嫌いにはなれない。
予定表にリストにしておいたプログラムは、サン・ミッシェルの名画座での「楢山節考」の上映時間が、有名教師のダンスのレッスンスケジュールともろにぶつかってしまったために、今村昌平のこの映画を見ることだけがかなわなかったが、あとはすべてこなした。
予定外の収穫は、いままで買おうかどうしようかず〜〜とぐずぐず迷っていた仏=英語の辞書を買ったこと(やっと装丁と内部の印刷のイメージと全体の大きさが気に入ったものを見つけたから)、そのとき同時に、図解が豊富に入ったラテン語=フランス語の辞書を買ったことかな。
その他、おいしいレストランを発見したり、何度も歩いてすっかり知った気になっていた通りの片隅に、フォトジェニックなアングルを見つけたり・・・という、「小さな、でも忘れられない喜び」は数知れず。
輪廻転生を信じるならば、自分は絶対、この町で以前、かなり濃い一生を送ったに違いないと確信する。
シャンゼリゼ通りとか、ノートルダム寺院、エッフェル塔・・・いわゆる観光名所には滅多に行かないのだが、けっしてそういう場所がきらいなわけではない。むしろ、日本やアメリカとはまったく違う、フランス式の「名所ってもののしつらえ方」には感服する。ただ、日常的な他の場所にあまりにもおもしろいところが多くって、大御所級の名所にまで足を延ばす時間がないだけだ。
あそこで何を見た、あの日にここへ行った、あの人がこんなことを言ってた・・・と、思い出すことはいくらでも。ひとつひとつ書いていたら、1週間のパリ滞在中のネタだけで、このブログに1年中書くことがあるくらい。
パリはすごい。
気長につき合ってきて、ほんとうによかったと思う。これからもいいつきあいができたらいい、とも思う、そして、そう思いつつ、この町はときどきひどいしっぺ返しをしてくるのだ、まるで、美しいけど性根のわるい、でもものすごく頭のいい女みたいに・・・ということも、わかっている。
パリが女なら、ロンドンやミラノは男だ、と思っていた。そう、町の風情が。でもどうもこのごろ、パリにも「男の側面」があるような気がしている。それは、しらじらとグレーがかった、どこかが軽薄な町全体のトーンからはなかなか分かりにくく、マスキュラン、ヴィリルという形容詞は、やはりどうしてもパリには合わないと思っていたのだけど、どうもこのごろ、ブルターニュやアルザス、中央の山岳地帯からパリへ出てきて、そこに根づいた「もとをただすと田舎のフランスの血」までを、どうにかかぎ分けられるようになってきたためかも知れない。
イントロダクションと締めがいっしょくたになったような文章ですみません。
くわしい旅の内容は、来週以降に、気が向いたら。
ばらしきっていない荷物満載のスーツケースがふたたび中央を占拠してる我がジャングルにて、今夜はひとまず、心が満腹での巴里礼賛なり。