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ああ、やる気がでない・・・

ガットパルド(gattopardo)

通訳・翻訳者リレーブログ

暑いから。
私の部屋には、エアコンがない。あついの、すごく。暑いし、ちょっといまたいへんな翻訳かかえてるし、もう、ぜんぜんやる気、ないの。氷がとけてうすうす〜〜〜のアイスコーヒーみたいな文章になるけど、許してくださいませ。
私はね、ほしいのよ、エアコン。でもだったらなんで、取付けないのか?
母親と同居だから。
これだけではよくわかりませんねえ。いやはや、話せば長いいきさつがありまして。
そもそもうちは、ご近所に横田基地ってのがありまして、そこに米軍の飛行機が発着して騒音がするので、申請すれば自治体負担で家の窓を二重ガラスにしたり、エアコンを取付けたりしてもらえるらしいのね。で、何年かまえに母親がその話を持ち出した。「エアコンつけたいなら、手続きしてあげようか?」と。
しかし、ガットパルドは、いまでこそ自分の人生自分でひらく、とばかりに、のびのび生きているんですが、子供のころは優等生、これであんがい、世間様に気を遣いながら辛抱強く生きていた子供だったんです。そういう人間にありがちな、遅れに遅れてやってくる反抗期。それがまあ、何年か前だったわけ。いろいろあるわけよ、個人史、ってものがね。
とにかく、この、「手続きしてあ・げ・よ・う・か?」という、「やってあげてもいいわよ」というニュアンスが気に入らなかったのである。ムカッときたのである。
大人げない、と笑うなかれ、母親と長女、という関係は、嫁・姑の関係などより、百倍も根が深く、奥深く、タチがわるい。ほんのひとことにむかっ腹がたつ、という現象にも、長い長い、それこそ、一方が他方のおなかの中にいたころからの、前段階があるわけですよ。
「なによ、そのいいいいかたわあ!」ということになり、「なによ、そっちこそ、クーラー(世代的に、わが母は「エアコン」ではなく「クーラー」である)いらないの!?」「そんなこと言ってないわよお、その言い方が気に入らないって言ったのよお!」「本題がちがうじゃないの、申請するの、しないの、どっちなの?!!!」「それが人の意見を促すきき方かあ!!??」・・・とまあ、文字にするときわめてつまらなくなるのですが、わが家の親子げんかって、けっこうすごいのよ。なんたって、幼少時にわたくしの言語中枢を鍛えた母親ですからね。結局勝てずに、最後にくやしまぎれにちゃぶ台ひっくり返すのはこのわたし。
なんてことはない、このときも収拾がつかなくなって「いいわよもう、エアコンなんか誰がいるもんか!!!」と、致命的な発言をしてしまったのであります。
以来、どうにもこうにも、エアコン取付けるのはプライドが許さなくって、意地になって汗ダラダラの夏をすごしている。しかし、数年この状況に耐えてみて、あんがい、体にいいんじゃないかと、このごろは思っている・・・だって、きょうび、建物の中に入ると、まずどこに行ったって冷え冷えでしょう。せめて自分の部屋ぐらい、自然な環境にしておくのも悪くないかも・・・夜になれば扇風機で充分しのげるし、どうせほんとのほんとに死ぬほど暑いのは、毎年3週間程度の期間なんだから。
しかし、私に性格が似てるのかどうか、それはなんとも言えませんが、母親のほうはちゃっかり市に申請を出して、はい、わが家は、私のこの仕事部屋、皆さんご存知の「通称ジャングル」以外の部屋には、すべてエアコンがついています。
口は災いのもと、意地を張るのもてきとうに。
しかし、猛暑の夏より越えがたいのは、母と娘の確執ですかねえ。
行く末は、神のみぞ知る。

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記事を書いた人

ガットパルド(gattopardo)

伊・仏・英語通翻訳、ナレーション、講師など、幅広い分野において活動中のパワフルウーマン。著書も多数。毎年バカンスはヨーロッパで!

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