いかに集中力を維持するか(続き)
先回は、自宅で仕事をしていると、集中を妨げる現象(?)が実に多い、というお話をしました。
まず、言うまでもなくインターネット。翻訳業務には必須のアイテムですが、気をつけないと、ネットのぬくぬく温泉に浸かったまま、出てこられなくなります。わたしの場合、動物のおもしろ映像が特にキケンです。ネコちゃんのホケホケ映像とか。ハムスターのオバカ映像とか。
そして在宅ならではの問題もあります。郵便や宅配はもちろん、家事そのものも気を散らす原因になります。洗濯機やホームベーカリーが終了の合図をすれば対応しなきゃならないし、夕方になれば、夕飯どうするかな、とつい考えてしまいます。
会社員さんの場合は、洗濯も夕飯も当然ながら仕事終了後に対応するわけなので、在宅仕事であってもそのようにきっぱり分ければいいのですが、やはり同じ屋根の下にキッチンがあり、洗濯機があると、「せっかくだから」と、仕事と同時進行させたくなります。それゆえ、下手をすると15分に一回は立って火加減を見たりしちゃうわけです。これで集中できるわけがありません。(もちろん納期が厳しい場合は、何もかもうっちゃってひたすら仕事部屋にこもりますが)
そして、集中力を削ぐ最大の原因が「音」です。家の前を通る人(高笑い、叫び声)や犬の声。道路工事や住宅建設の音。救急車、消防車、パトカーのサイレン。エアコンの室外機や、屋外に置いてある温水器などの音も結構気になることがあります。どれも気にしなければいいと思うのですが、イライラしたり、腹が立ったりしなくても、「はやく止まないかな」と考えてしまった時点で、つまりは気を取られているということなんですよね。
訳出中は大丈夫でも、見直し中は本当にダメで、何度も同じところを読み返すハメになったりします。単に集中力が低過ぎるだけということも考えられますが(笑)。
とはいえ「継続音」は、特に不愉快な音でない限り、そのうち慣れてしまいます。しかし突発的に聞こえる音は大敵。オフィスであれば、少々雑音や突発音が聞こえても平気なはずなのに、在宅オフィスですと、なぜか気になります。「仕事中!!」という雰囲気を自分一人で醸成するしかないからでしょうか。
大嫌いな上司だろうと、やる気のない同僚だろうと、お気楽な後輩だろうと、常に誰かに見られている(可能性がある)というのは、本当にすごい強制力として働きます。一人だと、あくびしようが歌を歌おうが、いっそ寝てしまおうが、だ〜れも注意してくれませんので。
ともあれ、そういう外部の音に対抗するには、それに対抗できる音を部屋の中で鳴らすか、あるいは耳栓やヘッドホンをするしかありません。
以前、家の近くで長期にわたって工事が続いたため、たまらず高性能の耳栓を買ったことがありました。しかし耳栓はシャットアウトできる周波数が決まっていますし(高い音はカットしても、重機などの重い音はほぼスルー)、なにより耳がかゆくなります。
それから、音楽用にノイズキャンセリングヘッドホンを持っているので、それも試してみました。しかし「防音ヘッドホン」ではないので、外部からの低音はすっと軽くなるものの、まったく聞こえなくなるわけではありません。なにより長時間装着していると疲れますので、毎日朝から晩まで使うには現実的ではありません。
となると、外の音を打ち消す音を部屋の中で鳴らすしかありません。
普通の音楽でそれをやろうとすると、相当なボリュームにする必要があり、これまた現実的ではありません。それに音楽ですと、曲の切れ目がありますし、歌詞が入ることがあるし、静かな曲、うるさい曲といろいろなので、なかなか難しいのです。(翻訳で使用している言語は思考の妨げとなりますので、歌の入った曲は極力回避、です)
こうした試行錯誤の末にたどりついたのが、「波の音」と「飛行機の音」の組み合わせです。
youtubeなどで「集中力」等のワードで検索すると、波の音や滝の音などのヒーリング系のものに加えて、飛行機が上空を飛んでいる時の音や、ラジオのホワイトノイズなど、何の役に立つのか分からないような音源が大量にヒットします。しかも数分ではなく、数時間とか、長いものでは10時間などというのもあります。
わたしも最初は、飛行機の音が何の役に??と不思議でしたが、実際に聞いてみたところ、これが悪くない。
国際線では、夜の時間になると機内の明かりが強制的に消されますが、あのときの感覚がよみがえります。どうしても眠れずに、手元のライトで本を読んでいると、周りはすっかり静まり返ってしまい、聞こえてくるのはゴーーという飛行機の音だけで、妙に集中してしまう、あの感じです。
これをスピーカーで流すと、案外、周りの雑音が消えてくれるのです。工事の音や車の音、それに家の中に自分以外の家族がいても、その生活音も消してくれます。音にほとんど変化がないので、じきに流れていることを忘れます。
それから波の音。浜辺に打ち寄せるちゃぷちゃぷという静かな音ではなくて、「日本海の荒波」みたいなザバーンザバーンという音が最適です。こいつは人の声に強くて、子どものキーキー声から中高生の大声、奥様方の高笑いまで、かなりかきけしてくれます。
で、わたしのワガママも際限がありませんで、
- どうせならすべての騒音をシャットアウトするため、波の音と飛行機の音を同時に流したい
- 外の騒音を消せるのなら、できれば好きな音楽を聞きたい
- 切れ目なしに最低でも3時間くらいは音が流れてほしい
などと考え始めます。そこで諦めないのが、わたしの長所といいますか短所といいますか、とにかくなんとかならんかと頭を絞るわけです。
波と飛行機の音は、元々がyoutubeですので、そこにアクセスすれば何度でも聞くことはできます。しかしそれも面倒なので、音だけをダウンロードし、さらに音楽制作用のGaragebandというソフトを使って、波の音と飛行機の音を重ね、それを切れ目なく繰り返して3時間程度としたトラックを作成して使っています。これをバックに流したうえで、自分の好きな曲を流せば、もう文句なし!!!!
と、ここまで書いてきて、「ただ集中すればいいだけの話でしょ!!」と9割くらいの方に言われているような気がしてきました(笑)。実際、これだけのことをする気力があるなら、集中力を高める努力をしなさいよ、と自分でも思いますが、ま、いいんです。好きでやってることですから。
というわけで、いまこの瞬
間も、波の音と飛行機の音を重ねたトラックを流しつつ、インターネットラジオでジャズを聴きながら、これを書いています。
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さて突然ですが、このブログの担当を今回で終了させていただくこととなりました。2013年8月から2年余り、この通訳・翻訳者リレーブログのなかでは特に短い期間となってしまいましたが、これまでつたない内容のブログを読んでいただき、ありがとうございました。
上のエピソードから分かるように、翻訳者としてはどうよ、という感じのわたくしアースですが、来年1月より、恐れ多くも、このハイキャリアで金融翻訳に関する講座を担当させていただくこととなりました。
来年1月からは襟を正しまして、金融翻訳についてまじめに語ろうかと思っております。金融翻訳に興味のある方だけでなく、翻訳者を目指す学習者さんにも役立つ内容にできればと考えています。現在、具体的な内容を鋭意企画中。どうかご期待ください!