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アースの皆既日食旅行記(13)

アース

通訳・翻訳者リレーブログ

2017年8月21日午前9時過ぎ。太陽高度約30度。

待ちに待った第一接触の時間である。天気はほぼ快晴。山火事の煙が若干気になるが、影響するほどではなさそうだ。

第一接触とは、皆既・部分日食で、太陽の縁と月の縁が最初に触れる瞬間のことをいう。これ以降、太陽と月の重なっている部分がどんどん大きくなって行く。

月が太陽に触れるといっても、当然ながら「そう見える」だけである。実際には地球から38万km離れている月が、1億5,000万km離れている太陽と重なって見えるわけだが、これは奇跡的な位置関係だと言われている。

例えば、太陽が今より近かったり、月が今より遠ければ、見かけ上、太陽が月からはみ出してしまう。逆に太陽が遠かったり、月が近ければ、月は太陽全体を隠すことはできるが、いわゆる「ダイヤモンドリング」(皆既前後に見られる現象。いずれ説明する)は見られない。

しかし現実には、何年かに一回、地球から見て、月と太陽が見かけ上まったく同じ大きさで重なる瞬間があるのだ。これが奇跡でなくてなんだろう。

実は、月は年間3~4センチずつ地球から遠ざかっていることが分かっている。つまり5億年前の月は、今より2万kmも地球に近く、今よりずっと大きく見えたはずである。これでは、今のような完璧な日食は起こらない。これから5億年後も無理だろう。

地球誕生後46億年というこの絶妙のタイミングで、人類が皆既日食を楽しめるまでに進化したことは、二重の奇跡と言えるかもしれない。

太陽系規模にまで大風呂敷を広げてしまった。地球上の一点にむらがるバカどもに視点を戻そう。

しっかりした観測機材を持ち、データを重要視する人々(例えば日本人の集団や、大学の観測チーム、専門家が監修・同行している日食ツアーなど)と一緒に観察すると、必ず「第一接触まであと10秒。太陽の右下から欠け始めます」などと誰かがコールしてくれるが、テキトーな人々だけの集まりでは、だいたい
「そろそろ時間だよ」
「あ、右下がちょっと欠けてない?」
「ええ~。むしろ左下のほうだと思うけど」
「いや上だろ」
と、かなりテキトーである。人間の観察眼などいい加減なものだ。月がどちらから太陽に重なっていくかは、ちょっと考えれば分かるはずなのだが。だがそのうち、
「ほらほら、もうはっきり分かるよ!」
「あほんとだ。右下だった。えへへへ」
てな感じになる。

この時間のわくわく感は、ほんとうに説明し難い。初めての人はもちろん、わたしのように6回目のベテランでも、10回以上などという猛者でも、いや回数を重ねていればいるほど、「あの」瞬間が近づいているのだと考えるだけで、身体が震える。

さあ、これから約2時間。何年ものあいだ待ち焦がれた時間の始まりだ。

※今後、皆既でなくとも日食を観察される方は多いと思われるので、ここで天文普及委員会から注意事項をお伝えする。

1)日食グラスは、手製のものではなく、専用に販売されているものを使いましょう。当然ながら、どれだけ濃くてもサングラスなどは絶対にNG。0.5秒でもダメです。専用グラスは、「太陽以外のものはまったく何も見えない」くらいの濃さになっています。
2)専用グラスでも、皆既(太陽が完全に隠れている)時間以外、長時間の使用はやめましょう。
3)グラスで目を覆ってから、太陽の方を向きましょう。

以上のことを怠ると、失明したり網膜に障害が残るなど、取り返しのつかないことになります。よって厳重注意です。

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記事を書いた人

アース

金沢在住の翻訳者(数年前にド田舎から脱出)。外国留学・在留経験ナシ。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。

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