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アースの皆既日食旅行記(5)

アース

通訳・翻訳者リレーブログ

ポートランド空港に到着。空港ビルのあちこちに、2017 Total Solar Eclipseのポスターが貼ってあり、いやがうえにも気分が盛り上がる。

レンタカー会社の差し向けたバンに乗って、レンタカー屋へ。長い行列ができているのに、スタッフが2人しかおらず、丁寧なのか何も考えていないのか、とにかく一人の客に長い時間をかけている。

いつものことだが、ジョンの突出したフレンドリー度がこういった場所でも発揮されるため、ますます時間がかかる。借り受けるまでに15分は話していたろうか。これに慣れているサラとわたしは、すみっこでおとなしく待つのであった。

いまここで車を借りようとしている猛者がいる。無理だろう。日食前後は、ポートランド中のレンタカーがすべて借り上げられる、という予想もあるほどなのだ。しかし考えてみれば、ちょうど夏休みの時期、何も知らずにポートランド観光をしに来た人々にしてみれば、ワケのわからない状態だったかもしれない。

わたしはもちろん、ジョン&サラも「全米一住みやすい街」をゆっくり見たいということで、ポートランドには計3泊したが、まともに行ったのはオレゴン科学産業博物館のみで、あとはホテル近くの河原でだらだらしたり、町をぶらぶらするだけで終わってしまった。だが3人とも、そもそもそういうタイプの旅行者なので、それでいいのである(他人と旅行する際、この種の感覚がずれていると、絶対にうまく行かないだろう)。

オレゴン科学産業博物館は少し町外れにあったため、面倒くさがりやさんの3人は、初めて「ウーバー」を使った(慣れない街中を運転したくないということで、レンタカーも諦めた)。

※ Uber(ウーバー)は、自動車の配車ウェブサイト/アプリで、一般的なタクシーの配車に加え、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ仕組みを提供。(Wikipediaより)

アプリが最寄りのウーバータクシーを自動検索してくれるので、良さそうな一台を選んでOKしたら、5分としないうちにやってきた。

一般人が空き時間にやるタクシー稼業なんて、どんなもんじゃと不安だったが、今回の旅行では、3回使って3回とも、親しみやすい運転手ときれいな車で、実に快適であった。たまたまかもしれないが。

印象的だったのは、運転手が3人とも「副業」でやっていたこと。みな空き時間を利用してお金をため、今後の人生に生かしたい(勉強や起業)ということだった。確かに、手っ取り早く資金を貯める手段としてはいいかもしれない。

オレゴン科学産業博物館に行った時のウーバー運転手(スーザン)との会話。
スーザン「あなたたちも日食?」
ジョン 「そう。ボクたちね、1994年のチリの皆既日食の時に知り合って・・(以下略)」
スーザン「ザンネンだわ~。仕事がなければ、あっ仕事って本業の方ね。それがなければ、私も見に行くんだけど。でもポートランドは部分日食でも99%欠けるんですってね。なら皆既日食とほとんどおんなじ?」
ジョン 「いやいやいやいや。ぜんっぜん違うのだよそれが。なぜって・・(以下略)」
サラ  「完全同意」
わたし 「右に同じ」
スーザン「へえ~。くやしいなあ」
ジョン 「ポートランドから離れられないなら、ボクが実におもしろい部分日食の観察方法を教えてあげよう。それはね、太陽を見るんじゃなくて、地面を見るんだよ。いやジョーダンじゃなくて・・(以下略)」

ジョンの力説をさえぎってしまったので、代わりにわたしが説明しよう。部分日食しか見られないと不満をもらした人全員をつかまえてジョンが教えていたのは、地面に映った木漏れ日を見る方法である。

葉っぱの間を通ってきた太陽光が地面に映ると、ピンホールカメラの原理によって、「そのときの食の形」になる。例えば太陽が50%欠けていれば半月の形、70%ほど欠けていれば三日月の形になるのだ。

言葉で聞くと信じられないかもしれないが、ネット上に写真がたくさんあるので、「日食 木漏れ日」などで画像を検索してみてほしい。

さて。

科学産業博物館は、その名の通り科学と産業の博物館である。ポートランドで唯一行ったランドマークがそれ?と言われそうだが、なにしろアメリカの天文雑誌Sky & Telescopeに広告が掲載されていたScientific Expedition社(科学探険旅行社)の日食ツアーで知り合った我々である。これでいいのだ。

わたしがもう一つ考えていたのはオレゴン歴史博物館であるが、展示内容を見る限り、1人でじっくり回った方が良さそうなので、次回(いつ?)に延期した。

科学産業博物館の展示内容は、それなりに個性はあるものの、特に突飛なわけでもないので説明は省略するが、ひとつだけエピソードを紹介しておく。

博物館のそばに、米海軍が実際に使用していたディーゼル潜水艦があり、その内部を回って見られるガイドツアーがあったので、ジョンと参加した(サラは「狭くて油臭いに決まってるから、外でのんびりする」というので不参加。確かに通路などはひどく狭く、そして臭かった)。

参加者は15名ほどだったが、小学生くらいの非常に熱心な男の子の的確な質問と、やはり質問が抑えきれないジョンのせいで時間が押し、最初はゆっくり丁寧だったガイドさんの説明がどんどん速くなる。

※海外でいつも思うことだが、周囲が全員大人であろうと、まったく質問をためらわない子供たちの姿勢に感心する。あの男の子のなれの果てがジョンなのだろう。

おそろしげな武器の部分はともかく、ソナーの探知距離だの、潜望鏡の長さだの、バラストタンクの容量だの、潜水艦なのにディーゼルってか!みたいな部分だのは非常に興味深いものの、専門用語の羅列と速まる一方の会話に、「だめだもうついていけない」とわたしが白旗を上げたころ、ようやくツアーは終盤に。(もちろんそれまでも、何の話をしているかがどうにかこうにか分かる程度である。念のため)

最後に兵士用の食堂に入り、いかにもまずそうな食事の説明が一通り終わった後。疲弊しきったわたしの頭に響いてきたのは、なんともかわいらしい女の子の、たいへんに分かりやすい質問であった。

「この、アイスクリームつくりきは、いまも、うごくんですか?」

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記事を書いた人

アース

金沢在住の翻訳者(数年前にド田舎から脱出)。外国留学・在留経験ナシ。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。

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