田舎のないない話
「辞書を編む」の第4回にしようかなぁと考えつつ、毎回、人の思い出話というのもつまんないと思いますので(書く方も飽きてきましたし)、今回はお休み。わたしの住む北陸地方のN町を日本の田舎代表に勝手に位置づけ、リポートをお届けします。
田舎に住んでいると言うと、いろんな人にいろんなことを聞かれます。しかしどんなに言葉を尽くしても、感覚的に分かってもらうのはなかなか難しいようで、いつも歯がゆい思いをします。ですので、きょうは数字から攻めてみます。(「うちも十分田舎よ」と密かに思っているそこのアナタ、どうぞご自分の地域と引き比べながらお読みください…)
大前提として、わたしが暮らすN町の広さは、山手線内側の面積の約4倍あります。山手線内側の人口は約100万人と言われていますが、N町の人口は現在、約1万8,000人です。
渋谷のスクランブル交差点で同時に移動する人数が最大3000人らしいので、信号が6回変わる間に、住民のほぼ全員が通り過ぎてしまうわけです。(ぜんぜん関係ありませんが、スクランブル交差点が完全に無人になるのは、午前3時台に10秒間くらいらしいですね。みなさん、早く帰って寝ましょう)
ウィキによりますと、東京23区の人口密度は1平方kmあたり14,704人。1平方kmというと、一辺が1km。このあたりで1kmというと、感覚的には田んぼが10枚って感じで…その中に1万5,000人?? 当然、縦にも広がってのこの数字なのでしょうけれど、それにしてもすごい…。
さて、我がN町の人口密度を計算してみましたらば、1平方kmあたり66人でした。桁は間違っていません。六十六人です。町内は山林と田んぼがほとんどですから、実際の密度はもう少し高いかもしれませんが、それでも東京とここまで差があるとは、改めて驚きです。
人間が少なければ、当然ながら公共交通機関も極めて貧相になります。我が家から最寄りの鉄道駅までは、30km。前は15kmだったのですが、何年も前に第三セクター路線が廃線となり、N町からは鉄道というものがなくなりました。バス路線もあるにはあるものの、ご想像の通り、一日何本?という感じで、とても使えるものではありません。
我が家のすぐ前の道路を通るバスは特に少なくて、一日3本(往復6本)です。これで利用しろと言われても、困りまする。
したがって、裕福だろうがビンボーだろうが、運動音痴だろうが方向音痴だろうが、車は18才以上1人につき1台。これがN町のジョーシキです。なので、一家に2台どころか、3台4台並べているお宅もあります。(車庫証明がいらないこともあり、駐車場には事欠きません)
最寄りのバス停の時刻表。すぐに暗記できそう。
よく聞かれるのは「コンビニあるの?」。答えは「ある」です。しかし問題はその数と、最寄り店舗までの距離。いい機会ですので(?)、調べてみました。
- セブンイレブンとローソン
調べるまでもなく、N町内には存在しません。隣接市町村にもありません。我が家からいちばん近い店舗は、どちらも50km先でした。
セブンイレブンのキャッチコピーは「近くて便利、セブン-イレブン」。便利なことは否定しませんが、ぜんぜん近くないっての。東京ー厚木間の距離です。
- ファミリーマート
隣接市町にそれぞれ2軒ずつありますが、N町内にはありません。我が家からの距離はいずれも30km。東京ー横浜間です。
- サークルK
N町内に3軒あり!!!! しかしこれは、山手線内側に1軒弱ということです。これを「コンビニがある」と表現していいのかどうか、激しく悩むところではあります。
我が家から最寄り店舗までの距離は、ぐっと縮まって、なんと5km!! でもこれって新宿ー渋谷間の距離なの。でもでも、その間の信号は「1つ」なので、車で10分以内で着いちゃいます。でもでもでも、歩いたら往復2時間以上。冬の雪道だったら遭難すること請け合い。イノシシよけの鈴も必須です。やはりコンビーニエントなストアとは言えません。
それでも、このお店ができてから、夕食後に「アイス食いたい」などと言って、つい買いに行ってしまうようになりましたから、夜でも開いているお店があるということは、すなわち本来なかった需要が生じるということなのでしょう。おそるべし。(ちなみに、このあたりのスーパーの閉店時間は19〜20時です)
我が家の「最寄り」のコンビニ。地元商店と異なり、都会から来た人も立ち寄りやすいせいか、いつも案外混んでいます。そのためか、このようにたいへん駐車場が広く、大型車用のスペースまで用意されています(写真左端に「大型車用P」の看板)。冬になると、駐車場の片隅に小型除雪車が待機するほど。
コンビニの他によく聞かれるのはファストフード店ですが、ずばり1軒もありません。隣接市町村にもありません。全国展開しているお店について調べてみると、我が家から最寄りのお店までの距離は以下でした。
- ミスタードーナツ:50km
- マクドナルド:70km
- スターバックス:70km
- ケンタッキー:110km
ケンタッキーは、東京駅から富士山の頂上までフライドチキンを買いに出かける感覚ですね。(どーいう感覚!!)
などと無理に並べ立てましたが、要するにこういうド田舎に住んでいる場合、この種のお店にはそもそも行かない、ということになります。コンビニに行く回数も、おそらく都会の方と比べると、ほぼゼロと言っていいと思います。
同様に、いわゆる飲食店も、ファミレスは当然ながらゼロ。よく無邪気に聞かれて、苦笑するしかないのが、「カフェとかないの?」。
いや、そーいうレベルじゃないし。「レストラン」と名のつくもの、カフェでなくとも「喫茶店」と名のつくものも、以前はぼちぼちあったものの、どんどんその数を減らしています。少なくとも我が家の半径15km圏内にはほぼありません。「定食屋」は幾つかあります。それから、やはり寒い土地柄か、飲み屋さんは多いです。
このような事情ですので、よほどのことがない限り「食事は家で」。お金があったとしても、使
お店がないので、せいぜい少し高い食材を買う程度になります。基本的に1日3回(弁当含む)、週に21回。自炊を続けると、どうなるか。
健康になります(笑)。
空気がいいせいもあるのでしょうが、この地で何年も暮らしていいことはなんだったかと言えば、加齢は別として、やはり健康が維持できていること。もともとそれほど弱い方ではありませんが、とにかく風邪を引かなくなりました。最後に熱を出したのも、いったい何年前?という感じです。特に冬場は湿気が多いので、のどを痛めることもなく、インフルエンザが大流行!!ということもあまりありません。っていうか、人が密集することがないので、うつりようがないし(いちばんうつる可能性が高いのは病院だったりして)。北陸ということで、魚介類が安くて新鮮でおいしいので、自然と魚を食べる回数が多くなることも、健康維持には役立っているのだろうと思います。
秋の恒例行事「きのこ祭り」。各種きのこが投げ売りに近い感じで売られるので、N町としてはかなりの人出ですが、それでも遠目にはこんな感じです。
ついでに出店の店先。左端にあるのはみたらしだんごではありません。「めがらす」はイカの口の部分で、地域によっては「カラス」とか「トンビ」とか呼ばれるようです。コリコリ食べられます。一般には珍味とされますが、このあたりのスーパーではよく山盛りで売られています。
ついでのついでに「椎茸用原木」。原木で作ったシイタケはおいしいですよ。え、作り方がわからないの?だめだなぁ〜。
チェンソーも売ってました。北陸地方には超巨大なきのこが生息しているため、きのこ狩りにはチェンソーが必須です(ウソです)。
どこがきのこ祭り….?
….きのこ祭りでした(41,000円也)。