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みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 先日、オーストラリアのとある高校の英語研修用のパンフレットの日本語翻訳を担当しました。ニュージーランドもオーストラリアも、英語教育が一つの産業として位置付けられ、お金を稼ぐ手段として留学生の誘致に熱心です。学校の中に留学マーケティング担当者がいて、アジア、ヨーロッパ、中東、南米を勧誘活動のために出張、ということも珍しくありません。

 なので、このパンフレットの翻訳自体は特に驚くものではなかったのですが、おお、と思ったことがあるので覚書です。

 パンフレットの発注主であるオーストラリアの高校は、「XXXX Grammar School」という名称でした。私が住むニュージーランドでは、Grammar Schoolというと、伝統のある公立高校が使う名称です。公立でも比較的新しい設立の学校は、CollegeやHigh Schoolを使うことが多いです。また、私立は、歴史がある学校でも、CollegeやSchoolを名乗ることが多いです(この「College」も国によって意味が異なってややこしかったりします)。

 今回の仕事を機に調べてみると、オーストラリアではGrammar Schoolというと、私立の学校を指すようです。同じイギリス文化圏であっても、そして、同じ用語であっても、違う概念を指すことがあるのだなあ、と改めて思いました。

 辞書で「Grammar School」を確認してみると、
『ランダムハウス英和大辞典』(第2版) 小学館によると、

アメリカでは「小学校」、
イギリスでは「英国の7年制の公立または私立の中等学校;11-18歳の生徒に対して,大学進学への準備教育を行う

となっています。

これまた全然違う概念で、びっくりです。さらに、オーストラリアでの意味はなくて、なぜかNZはあったのですが、

(NZ) 公立中学校

となっています。うーん、「公立」は合っていますが、日本でいう高校にあたる「Secondary School」を指すので、「中学校」は違うように思います。

 ちなみに中学校はNZでは、「Intermediate School」ということが一般的です。小学校の「Primary

School」と高校の「Secondary

School」の中間、ということです。さらに、大学や専門学校など、高校を卒業した後の教育機関は一括して、「Tertiary

education」をよく使います。tertiaryは、「三番目」という意味です。

 以前なら辞書に頼るしかなかった翻訳作業も、今ではインターネットで現地の情報を得ることができるので、確認がしやすくなりました。ただし、この現地情報

も、現地に住んでいる方のブログなどを鵜呑みにしたりすると、誤っていることがあるので、さらに裏を取る必要があったりします。翻訳作業より、調査作業に時間が掛かったりしますが、教育制度に関する用語は分かっているつもりになると意味を取り違える危険がある要注意分野の一つです。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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