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住宅観、人生観

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 NZに来て、「日本と違うなあ」と思うことの一つに、住宅に対する考え方があります。
 こちらでは中古住宅の売買がとてもさかんです。代々の農場経営といった場合を別にして、ライフステージごとに家を住み替えるパターンが定着しています。20年もたつと家に資産価値がなくなってしまう日本と違って、築50年といった家はむしろ、伝統的な建築形式や現在では手に入らない資材を使っている、ということで、高い値段がついたりします。郵便ポストには毎日のように、売り出し中の家の広告を集めた冊子が入っています。
 キウイの典型的なパターンとしては、まず若い時に小さな家を買います。そして、なるべく自分たちでペンキを塗ったり、水周りをきれいにしたりして、資産価値を高めていきます。
 その後、子供が生まれたら、部屋数が多く、庭がゆったりとした家に変わります。家族構成や不動産市場の動向などに合わせて、数年ごとに買い換えていく、というパターンも珍しくありません。
 この時期は学校の良し悪しも非常に重要になります。この国では、公立・私立を問わず、あらゆる学校を評価するレポートを国が発表しており、インターネットでだれでも見ることができます。その中にDecileという数値があります。これは、各学校の地域の経済状況を10段階で表したもので、簡単に言ってしまうと、金持ちの校区が10、貧乏な校区が1になります。Decileが10の学校は、いわゆる高級住宅地にあるということであり、教育熱心な親が多く、成績も高くなります。一方のDecileが1や2の学校では、勉強どころではなく、毎日の食べ物にも事欠くという子供たちが多くなります。このため、不動産選びには、各学校のレポートに表示されるDecileが欠かせません。こんな数値を発表していいのか、と思ってしまいますが、どのような校区であるかの客観的な判断材料として活用されています。
 住んでいる間、家や庭の手入れは欠かせません。古いペンキをはがし(そのための機械もごく普通にDIYショップで売っている)、新しいペンキを塗るなんて、お茶の子さいさいです。でも、ある知り合いは、「夫が家のことをやってくれるのはいいけれど、いつもどこかをいじっているから、なんか落ち着かない」と嘆いていました。
 とにかく、日本では自分でやるなんて思いもつかないことでも、過程を楽しみながらやっていきます。電動ドリルや電動のこぎりといった道具はもちろん、浴槽やシャワールームのキット、さらには家そのものを自分で作るための「家セット」まで売っています。
 ただ、途中でお父さんが投げ出してしまうパターンも多いようで、テレビ番組に、そういう悲惨な家をその道のプロが直してくれる、というものがあります。壁がはがれ、屋根が落ちかけた家のリニューアルが完成したら、奥さんが感動で涙ぐむ、というのがお約束です。
 そうこうして、何年かたって子供たちが巣立つと、丹精こめて手入れをした家に別れを告げて、こじんまりとした、部屋数が少ない家に変わる人が多くなります。マオリやパシフィック系、さらに中国からの移民は、3世代同居も珍しくありませんが、ヨーロッパ系の家庭では、たいていの子供は義務教育を終えると家を出ます。このため、手入れの簡単な小さな家、または高齢者専用集合住宅などに住み替え、余ったお金を老後の資金に当てる、というのが老後のパターンです。
 農耕民族の日本と狩猟民族のNZの違いが住宅観に出ているのかなあ、と思います。国が変われば、家への考え方、そして人生設計も違ってくるのです。当たり前と思ってとらえていることでも、場所を変えて、別の角度から眺めると、全然別のものに見えてきます。
 

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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