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Downside

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 大学で取っている科目の一つに、英語が第二言語の学生を対象にした、English Discourse for Translatorsというのものがあります。今週までの6週間は、「翻訳をするうえで求められるwritingとは」がテーマ。文法的に正しい、というだけではなく、世界中の人に理解されるために読みやすい、シンプルな英文を書いていこう、というものです。
 この中で、好ましくない英文を直していく、という授業の日がありました。その中の一つに、
"Americans tend to understate the downside of their plans."という文がありました。
 どこが好ましくないかというと、downsideという語句がunusual nounだ、というのです。でも、なぜunusualなのか、私には分からない。確かに、こちらに来てから、downsideという単語を目にすることはないような気がするけれど、どの辞書にも、下降、悪化といった意味以外に、悪い面、欠点、という意味が載っています(Oxford Dictionary of Englishでも)。だから、文章としては正しい、はずです。
 Native Speakerの20歳(彼は秀才で、高校を飛び級しているので、こんな年齢で大学院にいる)のクラスメイトに聞いてみたら、「うーん、ぼくにはどこが悪いか、分からないや、先生に確認してみて」とのこと。そこで、先生にも聞いてみたのですが、「間違い、というわけではないが、formalではない」とのこと。「では、人によっては好ましくない、ととらえる、ということですか?」と質問すると、「そう」とのこと。しかし辞書には、スラングである、といった趣旨のことは記されておらず、なぜunusualであるのか、ますます分からなくなってしまいました。
 そこでさらに、知り合いの年配のNative Speakerにと聞いてみると、文を見た瞬間に、「downsideはものすごく奇妙な感じがする。これはアメリカ英語だ」と即答。「20歳のクラスメイトは、どこが変か分からない、って言っていたんですよ」と言うと、「若い世代はテレビや映画ですっかりアメリカ英語になじんでいるからだと思う。私は絶対に使わない」ときっぱり。
 そうすると、例えばマニュアルを英訳するときに、そのマニュアルがイギリスやニュージーランドといったイギリス英語圏で使われる、しかも、商品が若者向きではなく、中高年をターゲットとする、という前提がある場合、downsideは好ましくない、ということになります。
 ということで、アメリカ英語とイギリス英語は、発音だけではなく、単語の一つひとつの意味や使い方に違いがあり、その両方を確認していく(少なくとも念頭に入れる)必要がある、という実例でした。はあ、英語って奥が深い。永遠に勉強です。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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