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Independentであるということ

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 あと4週間ほどで大学のSemesterが終了します。このため、先週には、私が所属している学科で、今後の進路についての説明会がありました。私自身はコース終了次第、すぐに仕事に戻ろうと思っているのですが、後学のために参加してきました。
 日本の大学では、どこの大学を卒業したか、が注目されます。このため、履歴書には、「○○大学××学部卒業」という書き方をすることが多いと思います。一方、NZの大学では、何をどうやって勉強したか、が注目されます。そのために、学士、修士、博士以外に日本にはないコースが充実しています。例えば私が取っているPostgraduate Diplomaは、学士号を持っていて、「論文を書くほどではないが、勉強をしたい」人向けです。ほかにも、「修士に挑戦する前にもっと深く勉強したい」人向けには、Bachelor of Arts (Honours)というコースもあります。なので、自分にあったコースを選ぶことが非常に大切です。また、社会人学生の受け入れにも、非常に力を入れています。
 そして、日本の大学と決定的に違う点は、学生は親から独立していることがほとんど、ということです。このために、学生ローンはもちろん、奨学金制度が非常に充実しているのです。今回の説明会で知ったのですが、私が想像していた以上に、Postgraduate(日本でいう大学院レベル)では奨学金を得られる可能性は高いものでした。
 説明会で経験談を話してくれた、ドイツ文学専攻で現在はMasterコースを取っている女性は、学部を卒業後、まず、ドイツの学校で英語を週に20時間教えるという制度を利用して、1年間、ドイツで生活したそうです。生活費を支給されるので、お金を使わずにドイツ語を勉強できて、旅行する時間も取れて、非常に有意義だったそうです。そして引き続き、Masterを取るための奨学金を受けているそうです。今年の彼女の学科の応募者は彼女一人だったそうで、「だから、ぜひ、奨学金は応募してみるといい。思ったより門戸は広い」とのことでした。
 さらに、奨学金担当窓口の女性があいさつに立ち、「ぜひ、私に相談してください。どんな奨学金があるか、提案させてもらいます」とのことでした。
 こちらでは、高校を卒業すると、たとえ親と一緒に住んでいたとしても、経済的には独立しています。話には聞いていましたが、「それでもやっぱり、親に頼る人もいるでしょう」と思っていました。ところが、若いクラスメイトに聞いてみると、「たぶん99%は、奨学金か、学生ローン、あと、Student Allowanceで学費をまかなっているはず」とのこと。ちなみに、奨学金は国の制度として存在するものであり、大学に入るための全国テストで成績優秀者に与えられます。毎年、このテストの時期になると、いくつも奨学金を得た非常に優秀な学生が新聞をにぎわせます。また、Student Allowanceは政府からの給付金で、親と同居していたり、親の年収がある程度高いともらえませんが、もらっている学生はかなりいます(私の聞いた限りでは学生の半分以上)。
 「え、じゃあ、お金持ちの親でも、子供の学費を払わないの?」と確かめると(この彼はおぼっちゃんなので、親の年収でAllowanceはもらえないけれど、政府からの奨学金はもらっている)、「まあ、ホントに、ホントに、ものすごく(彼はfuckingという言葉を使っておりました・・・)金持ちなら払うかもしれないけれど、普通はあり得ない。第一、親だって、家のローンを抱えているから、それどころじゃないんだよ」との答え。
 はあ、びっくり。「でも、私はやっぱり、親にしてもらったように、娘の学費は出してやりたいなあ」と言ったら、彼いわく「そりゃ、卒業時に借金を背負わずにすむ、というのは非常に優位なのは間違いないから、出してあげたいなら、出してあげたらいいと思うよ。」
 さらに、このやりとりを聞いていた私よりちょっと年上の日本人のクラスメイトによると、「私の娘なんて、始めは私が学費を出していたのに、成績を見せろ、とか、ちゃんと授業に出席しろ、とか言っていたら、ある日、学生ローンを自分で申し込んできて、『これ以上、口出ししないで。私は大学生なのだから、もう大人なの』と言われちゃった」そうです。
 そう、この国では、日本よりはるかに「Independent」であることが重要なのです。これは大学生にだけあてはまることではありません。小さいころから、Independentであることが重視されます。以前、日本語が分かるキウイの知り合いに、「君の口癖は、『気をつけて』とか、『危ない』だねえ。子供のことがすごく心配なんだねえ」と言われたことがあります。そのときはぴんと来ませんでしたが、「もっとおおらかに見守ってやれ」という趣旨が言いたかったのでしょう。また、歳を取ってからも、Independentであることが大切です。このため、老人になっても、子供と同居することはまずありません。
 さて、我が家の娘が大学生となるはずの7年後には、どういう選択肢をとることになるのやら。今は、「大学で、パフォーミングアーツをやるのー。音楽か、ダンスか、どちらにしようかなー。それともコンピューターをやろーかなー」という程度の夢みる11歳ですが。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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