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日本の夏、NZの冬

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 日本の知り合いからのメールには、「暑い、暑い」と書いてありますが、日本の夏を9年間、経験していない私にしてみると、実はちょっとぴんと来なかったりします。オークランドはただいま冬の終わり、春の気配。雨が多いですが、温度はそんなに下がらないので助かります。
 さらに12歳の娘にしてみると、3歳からオークランドに住み始めたので、日本の夏そのものの思い出がありません。こちらでは、8月6日も9日も15日もごくごく普通の日。忘れてしまうのです。この日に日本に何が起こったのかを。
 先週、「15日は、日本が戦争に負けた日だよ」と娘に言うと、「へえ、ホリデイなの?」とのこと。ああ、これではいけません。日本人なら8月になると、セミの声とぎらぎら照りつける太陽の日差しと共に、戦争の哀しみ、愚かさを二度と繰り返してはならないという思いが新聞、テレビなどですり込まれます。でも、娘にはこれがまったくない! いい、悪いではなく、日本人としての8月への思いを理解・共感する機会を逃してしまっているのです。
 戦争だけではありません。お盆という非科学的でありながら、日本人にとってはごく当たり前の慣習であり、祝日でないにもかかわらず、実質的にはビジネスが止まってしまうこの時期の独特の雰囲気も、娘は覚えがないのです。
 余談ですが、日本人には、宗教を聞かれると、「無宗教です」と答える人が多いように思います。でもこれは、誤解を生む可能性があります。というのも、英語圏(キリスト教圏)では、「無宗教」というのは非常に強い否定的な意味があるからです。確かに、絶対神・唯一神としての宗教ではないし、日曜日になると教会に出かける、というものではありません。でも、お宮参り、七五三や初詣では神社に出かけ、お葬式は仏式で行い、さらに、ご先祖様が戻るお盆には今は亡き人に思いをはせます。神道、仏教、さらにはアミニズムまで織り混ざり、「ばちが当たる」といった言い回しがごく自然に生活に根ざしたものが日本式の「宗教」と言えるように思えるのです。 
 なので、私はこちらで宗教を聞かれると(たぶん、日本で血液型を聞かれる頻度で聞かれる)、上記の説明はぶっ飛ばして、「仏教です」と答えるようにしています。日本で血液型を聞かれて、「O型」です、と答えたら相手の人が納得するように、「仏教です」と答えると、「ああ、そうなのね」で済むからです。これを「無宗教です」と答えると、おそらく、「ぎょっ、神を全面否定し、悪事を冒しても平気、というポリシーなのね」と思われ、雰囲気がぎこちななくなる恐れさえあるのです。
 話題を元に戻すと、この時期に1回は娘と帰省するというのは日本人としてのアイデンティティの確立において(言葉遣いは大げさだけれど)、重要な気がしてきました。でも、なにしろ学校は通常どおりにあるので、小学校のころならいざしらず、中学生になった今では、あまり長期の休みもとれません。そもそも、日本の夏の暑さを乗り切れるかどうか、非常に不安もあったりするのです…。
 

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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