Paul Henry
先週に続き、再びインドがらみのお話。Paul Henryは、NZで平日午前6:30から9:00まで放映されている報道・ニュース番組「Breakfast」のメインキャスター。私は見たことがないのですが(テレビがリビングにしかないので、朝、テレビを見る習慣がない)、Henryは毒舌で有名で、思ったことをずばり言うキャラクターで非常に人気があります。ところが、その彼が辞意を発表するという事態になりました。
発端は、10月4日の番組で、HenryがJohn Key首相に、「次のGoverner−Generalには『more like a New Zealander』を選んではどうか」と発言したこと。Governer−Generalとは、日本語でいうと「総督」で、現在はインド系Anand Satyanand氏が務めています。彼はフィジー系インド人の血を引いていますが、ニュージーランド生まれで、オークランド大学を卒業している、れっきとした「ニュージーランド人」です。ただ、この総督という職務は、英国の女王の代わりを果たす名誉職の色合いが濃いので、イギリス風アクセントを操る上品な白人の仕事、というイメージが強いのは事実。Henryの発言に驚いた首相は「彼はNew Zealanderだ」とかわしたのですが、このHenryの発言に、インド系団体はもちろん、移民を中心に抗議が殺到したのです。
しかも、テレビ局広報担当者がこの抗議を受けて、「Henryは『we quietly think but are scared to say out loud(ひそかに思っていても、声に出して言うのを控える)』ことをあえて言った」などと、発言したものだから、まさに「火に油を注ぐ」状態へ。この担当者にしてみたら、ジョークでかわそうとしたのでしょうが、事態を軽く見過ぎていた、としか言いようがありません。
そしてついに昨日、2週間の謹慎から、正式にHenryの辞意発表となりました。インド政府が正式な抗議を表明する、という外交問題にまで発展した大騒動となってしまったこの事件、アジア人の移民の1人である私からすると、NZの(白人の)本音と建て前、さらには移民と「NZ人」との摩擦の実態を垣間見た、という感じです。
ちなみにフィジーには、イギリスが植民地時代に強制入植させたインド系の人々が大勢、住んでおり、さらに、地理的に近い「大国」であるニュージーランドへ移住する人も大勢います。