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上を向いて歩こう

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 先月、クライストチャーチの地震について書いていた時に、まさか、日本でこんなことになるとは夢にも思っていませんでした。いろいろと思うことはありますが、まだうまく整理できていないので、一つだけ。

 東北大震災が発生してから2日後の3月13日に、オークランド日本人会主催による「Japan Day」というイベントが行われました。お花やお茶、カルタなどの日本文化の紹介、合気道、少林寺、太鼓などの舞台、そして各業者による出店などで毎年、大変賑わうもので、今年で10回目です。
 私は、娘が通う日本語補習校のPTA役員として、このイベントに参加しました。数ヶ月前から企画、段取り、ほかの保護者の方の手伝いの手配などの準備をしていました。
 ただ、正直なところ、非常に迷いました。日本がこんなことになっているのに、参加すべきなのだろうか。在住日本人の中には、「日本がこんな事態になっているのに、開催すべきではない」「日本人としての常識を疑う」「延期しろ」という意見が在住日本人向けサイトの掲示板にたくさん出ていました。
 でも、日本人会は中止をしませんでした。その代わりに、会場で義援金を集め、寄付することにしました。
 私は最後の最後まで迷い、前日の搬入作業の間も、さらに当日の朝、会場に行ってもまだ、迷っていました。そして、自分で結論を出せずに、一緒に役員の仕事をしている人に、「私たちはこんなことをやっていていいのだろうか」と疑問をぶつけてしまいました。するとリーダー格のその人は、「私たちが今やれることをやりましょう。子供たちも、会場で寄付を募るための箱を自分たちで作ってはりきっているのよ。私たちがしっかりしなくては」ときっぱりと答えてくれました。
 そうか、そうだ。今は自分のやれることをやろう。と、はっと目が覚め、その日は1日中、イベント会場で作業をしていました(私は補習校の保護者から集めた古本の販売担当)。
 Japan Dayではオープニングイベントとして急遽、黙祷が組み込まれた後、君が代を女性の方が歌われました。君が代を聴く機会はめったになく、黙って聞いているうちに、涙がこみ上げてきました。「君が代」という歌に様々な背景があることは知識として知っていますが、日本から離れ生活している今、この美しい調べがすんなりと心に中にしみこみ、日本人としての誇りを感じた気がしました。
 私だけかと思っていたら、一緒に販売を担当していた役員の人たちも目が赤かったので、ああ、同じ思いなのだ、と感じました。
 その日の午後には、補習校の子供たちが合唱を披露しました。歌は、「上を向いて歩こう」と「翼をください」。私は歌詞カード担当で舞台の隅に立っていたのですが、あまりにも今の日本にぴったりの歌詞の内容に、涙がまたこみ上げてきて困りました。
 歌というのは、人を慰め、励ますすごい力を持っている、とその時改めて思いました。

 上を向いて歩こう。http://www.youtube.com/watch?v=Z6gi6fpwKf8

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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