翻訳業界の未来について、ちょっと考える機会がありました
私は、ニュージーランドで「NZ Society of Translators and Interpreters (NZSTI)」という、翻訳者と通訳者のための組織のメンバーです。入会資格にはいくつかありますが、私の場合は、オークランド大学の翻訳コースをある程度の成績で修了した、という要件で認められています。
いろいろと講習会や懇親会などのお知らせが届くのですが、なかなか行く機会がありませんでした。でも、先月、オークランド大学で開催されたこのNZSTI主催のセミナーは、おもしろそうだったので、久しぶりにオークランド大学まで行ってきました。
お話をしてくれたのは、NZSTIプレジデントのQuintin Ridgeway氏で、テーマは「 the translation industry and professional translation both today and into the future」でした。ね、興味深いではありませんか。
私は、翻訳という仕事は、AIが発展すればなくなっていく職業だろうなあ、となんとなく思っていたのですが、Ridgeway氏によると、むしろ、翻訳市場はどんどん拡大している、有望な市場とのこと。特にこの拡大を担っているのは、ローカリゼーション、サブタイトリング、ウェブコンテンツ、メディアなどだそうです。
そのたとえとして、「Netfixができるまで、好きな映画を好きな時間に見るという習慣がなかった人でも、映画を見る時間が増えたのと同じ。今まで存在していなかった翻訳の需要が生まれている」と説明していて、「なーるほど」と納得しました。
そして、翻訳という仕事は、Translationだけではなく、Revision、Post-editingなども含まれて、Translatorから、Linguistと呼ばれるようになっているとのこと。
さらに、「neural machine translation(ニューラル機械翻訳)」の話に差し掛かって、「ふんふん、そんなものがあるのか」と身を乗り出したところで、何人かの人の質問で話が止まってしまい、そのまま将来の翻訳像の掘り下げはしないままに、1時間が終わってしまい、非常に残念でした。
どうやら翻訳コースの学生、そして私のようなNZSTI会員以外に、翻訳をやってみたいという人も参加していたようで、そういう人からの質問は、「NZSTIにはどうやってメンバーになれるのか」とか、「翻訳はどうやって報酬を決めるのか」とか、「えー、なんでそんな質問ここでするかなー」という内容で、しかもそれにRidgeway氏がいちいち丁寧に答えるのです。まあ、これがNZらしいといえばNZらしい?
ということで、不完全燃焼ではありましたが、久しぶりに大学で授業を受けた感じで懐かしくもあり、また、翻訳の未来はどうやらまだまだ明るいらしいので、まあ、行って良かったかな、という感じのセミナーでした。