歌っているかも?!
今週月曜日のお話当番、コーディネーターの名坂さんのお話を読んで、「私は無意識に歌っているかも…」とドキッとした。ちゃんと意識を引き締めておかないと、鼻歌を歌ってしまう癖があるのだ。子供の頃、自分としてはまったく“歌った”記憶がないにもかかわらず、「ご飯を食べながら歌うのをやめなさい!」とよく母親から叱られていたし、小中学校では試験中の鼻歌を注意されたこともある。決してふざけているわけではないのに出てしまう。大人になった今でも、駅で電車を待っているときなどに危うく音声を発してしまいそうになったところで危機一髪、気がつくことがある。これでは“にやにや”同様、知らない人が見たら非常にあぶない人に映ってしまうので、公共の場ではきちんと自分の挙動を見張っているようにはしているが、鼻歌解禁エリア、つまり、自宅のキッチンやバスルームなどでは気が緩むのか、鼻歌監視態勢が自動的に解除されてしまう。
この鼻歌のメカニズムを紐解いてみると、脳が思考している状態とかなりの結びつきがあることがわかった。何か別のことを考えているときにこの癖が発現するようである。ここまで大げさに考える必要があったのは、なんと仕事中に鼻歌が出そうになったからである(もちろん、ちゃんと気がついて阻止しました)。鼻歌は決して特定の歌の再現ではなく、あくまでも思考中に出る「フムフム」や「mhm」という音の延長なのである。しかも、通訳中の顔がまた鼻歌環境に適しているらしい。ちなみに私の通訳顔を再現すると、こんな感じである(お時間・ご興味のある方はどうかやってみてください):
集中すると眉間に力が入るため、眉毛が上がる。耳は、少しでも音が良く聞こえるように後ろ側にぐっと引き上げる。そして、腹式呼吸のためもあるが、花粉症歴30年の私は、鼻腔内の空気の通りが良くなるように鼻先もぐっと上げる。この時、鼻の穴は横に開くのではなく、鼻を高くするイメージで縦に開くのがコツである。口を開くと腹式呼吸が難しくなるので、口はしっかりと閉じておく。口の形はすぐに言葉を発せられる態勢にしておかなければならないので、上唇はリラックスさせ、下唇を心持ち引いておく。
これを真似してみた読者の皆さん、すぐにでも鼻歌が出そうにはなりませんか?
しかし、である。お客さんの前で鼻歌を歌う通訳者なんて聞いたことがないし、ファッション雑誌などにもよく、人に見られているという意識を持つことで表情や姿勢が美しくなるとある。先日通訳した演出家も「プロの役者たるもの、日常生活の中での無意識な挙動をすべて意識化すべきである。」と言っていた。通訳も常に人目にさらされる仕事なので、やはり普段の生活からきちんと自覚しておく必要があるのかもしれない。