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ラッシュアワー・マナー考

まめの木

通訳・翻訳者リレーブログ

暖かい季節になり、通訳の仕事が増えてくると、ラッシュアワーの満員電車で揉まれる機会も増える。以前は『通勤=満員電車』と当たり前に思っていたこのラッシュアワーだが、あらためて経験すると、その尋常ではないストレス度に驚愕する。周りを観察すると、ほとんどの乗客が苦虫を噛みつぶしたような顔や無気力蒼白な顔でじっと耐え忍んでいる。『よし、今日もやってやるぞ〜!!』と気合満々の顔は皆無だ。同じ体験を共有しながら、思わず『毎日こんな大変な思いをして電車に乗って、みんな出勤直後からパワー全開で仕事できるのかしら…』と心配になってしまう。また同時に、『日本の経済がちゃんと機能しているのは、こうやって日々、大変な思いで通勤する人々のお陰なんだ。』としみじみする。
しかし、やはりこんな場所でも信じがたい行動をとる人もいるのだ。いや、ストレスがたまる環境だからこそ、わがままや利己心が出てしまうのかもしれない。年間を通じて毎日満員電車に乗るわけではない私にこんなことを言う資格はないのかもしれないが、もう少し何とかならないものかと思ってしまう。車内でのマナーのことだ。20年以上前、高校通学に利用していた小田急線も物凄い混雑だったが、マナーの点から言えば、今ほどひどくなかったような気がする。世間では若い者には常識がない、とか、高校生はマナーがなっていない、などと言うけれども、とんでもない、ちゃんとした(?)大人たちだって、立派に(?)常識外れな行為に及んでいるのである。硬いビジネスバックの角がわき腹に刺さったり、綺麗なお姉さんにヒールで足を踏まれたりするのは、これは仕方がない。満員電車での不可抗力として許せる部分がある。しかし、どうしても納得できない行為もある。
つり革につかまるのはよいとしても、どうして他人の頭を肘で小突いて平気なのか。
なぜ、たった二駅なのに、新聞を読むことを我慢できないのか。
どうして、足を投げ出さずに座席に深く座れないのか。
自分の前の人も一緒に降りるのに、どうして手の甲で背中を押すのか。
ちょっと気をつければ、周りの人が不愉快な思いをしなくても良くなるのに…と思うけれど、本人にしてみれば、毎日のことで体も心も疲れてしまい、他人を思いやっているどころの話ではないのだろう。
以前、夕方のラッシュアワーで、年配の男性の一団がリュックサックを背中にしょったまま乗ってきたことがある。山登りの帰りだったのだろう、楽しかった一日の話で盛り上がっている。周りの乗客は眉間にしわを寄せ、これ見よがしに嫌な顔をするものの、声に出して注意する人はいない。私は近くにいたので、思い切って、
『あの、申し訳ないんですが、リュックを前にして持っていただけませんか?混んでますので。』
と声をかけた。言い出すのは恥ずかしかったけれど、いい大人がこんなマナー違反をしてはいけないと、妙な義侠心が出てしまったのである。すると…
『うるせえなあ〜。こうゆう若いやつが日本をだめにするんだよな!年配者を敬う気持ちはねえのかよぉ。』
絶句、である。大人がこうでは、もう、何も言うことはない。周囲を見渡しても、私を応援してくれそうな人はいなかった。日本はいつからこんな国になってしまったのだろう。少し、寂しい気持ちになる。とは言え、人の観察ばかりして嘆いている場合ではない。私だって、知らず知らずのうちに他人様に迷惑をかけているかもしれないので、よくよく注意して行動せねば…とあらためて反省、反省、である。

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記事を書いた人

まめの木

ドイツ留学後、紆余曲折を経て通翻訳者に。仕事はエンターテインメント・芸術分野から自動車・機械系までと幅広い。色々なものになりたかった、という幼少期の夢を通訳者という仕事を通じてひそかに果たしている。取柄は元気と笑顔。

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