笑われても楽しい優雅なひと時
ありがたいことに、先月からまたバレエ教室通いを再会することができた。前にも少しご紹介したが、私の通っているクラスは『地域主婦の地域主婦による地域主婦のためのバレエ教室』で、参加者も先生も皆、素晴らしく良き人々なのである。仕事の都合で長期間休んでしまっても「来てくれて嬉しいわ♪」と迎えてくれるし、久しぶりなのでステップをすっかり忘れてしまって一人で逆方向に暴走してもイヤな顔ひとつされない。教室にはトウシューズを履ける方もいて、溜め息の出るような華麗なピルエット(回転)を披露する技量があるにもかかわらず、シソン・アッサンブレ・グリッサードの違いが今一わからずにヘナヘナしていても、笑顔で「大丈夫よ!」と励ますようにうなずいてくれる。先生も、私が家で声を荒げて言うように「それ、もう百万回くらい説明したよね?!」などとは決して言わない。上級者のレッスンを止めてまで教えてくれるし、バレエ音楽に乗って体を動かす楽しさを味わえるように、“私バージョン”の簡単なパッセージを考えてくれる。本当に、行く度に皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。「足引っ張ってごめんなさい」と謝ると、「私もおばさんの趣味でボチボチやってるから心配しないでね」と優しく言ってくれるのだが、“おばさん”だなんてとんでもない、確かに年齢的にはそうなのかもしれないが、いざトウシューズを履いてシルフィードを踊れば、まるで妖精か少女のような優雅さだ。綺麗なお姉さん好きの私にとっては、心身に良いばかりではなく、目にも楽しい時間なのである。
こんな楽園のような環境に甘え、ことバレエに関しては、みっともない姿をさらしても恥と思わなくなってしまった。クラスの方があまりにも優雅で、あまりにも和やかなので、まったく恥ずかしくないのである。回転しているうちに目が回ってきて、あらぬ方向へとフラフラ漂ってしまい、みんなに笑われても、まったく卑屈な気持ちにならない。なぜなんだろう、と思う。多分、意地悪な笑いではないからだ、としか考えられない。意地悪な人がいないなら、もともと『性善説万歳!』の私はさらに安心し、「まあ、いいか。皆さんとはキャリアが違うんだし」と妙に堂々としてしまう。幼少の頃の“容姿コンプレックス”はどこへやら…である。
そうはいっても、鏡に映る自分を見て、「こんなに足が曲がっているのか!」とか「こんなに動きが野暮ったかったのか?!」と再発見(?)すると愕然とするのだが、笑われてもこんなに楽しいのなら、通う気も100倍になる。今の目標は、シソン・アッサンブレ・グリッサードのステップをちゃんとマスターした暁に、ご褒美として『ロメオとジュリエット』のジュリエットが着ているような、真っ白でひらひらの可愛いレオタードを買うことである。