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天は動く

まめの木

通訳・翻訳者リレーブログ

お盆で帰省した時、姪の進学をめぐってちょっとした家族会議になった。話題の中心となった彼女は、少し内気だが、浮付いたところのない真面目な高校三年生だ。聞けば、心理学を専攻したいという。私にも中学生の頃から、『人は何故ゆえに生きるのか』などと考えてしまう、若さゆえの気取りがあったから、真面目で本ばかり読んでいる彼女の心理学に憧れる気持ちがよく理解できるし、心理療法士になってひきこもりやうつ病の人を治したい、と、とつとつと未来の希望を語る彼女はあっぱれ!と思うのだが、家族の反応は少し違った。彼女は東京の私立大学を希望しており、5人も兄弟がいる上に家が富山なので東京の私立なんてとんでもない、という両親の意見はもっともなのだが、議論白熱のあまり、大学に行くなら将来の仕事に直結するような技・知識・資格が身につく学科以外はもってほのかである、果ては、国立大学に行けなければ大学に行かなくてもよろしい、という極端な意見まで飛び出す始末だった。若い頃、好きなことを好きなだけやらせてもらってきた上に、今もなお好きなように生活させてもらっている私たち夫婦には、まったく出る幕がない。
時代の差なのか、我々の高校時代を振り返って、考えさせられた。あの頃は、皆、大学に行きながら将来を模索することが許されていた時代である。お金にならないような夢を持つのはいかん、というような風潮はあまり強くなかったように感じる。皆、有名なデザイナーになる、カメラマンになる、ミュージシャンで成功してやる、俳優になる、等々、色々な夢を持っていた。若いが故の大言壮語、若いが故の支離滅裂な情熱、またそれに向かって打算なく努力できる時間も、長い人生にとって大事なのではないだろうか。ドイツに行ってからは、大学とは勉強するところだから、勉強をしないのなら大学に行かなくてよし、あるいは今どうしても勉強したいものがないのなら、すぐに大学に行く必要はない、大学に行くことだけが人生の目的ではない、という意見を持つようになったが、やはり、やりたいと思うことを反対されたり、高校三年の時点で将来の生活が成り立つかどうか考えなくてはならないのは、事情があるとはいえ、さぞ辛かろうと思う。同時に、自分を振り返り、一銭にもならないかもしれない夢物語に情熱をかけられる環境にいた自分はなんと恵まれていたことかと、今さらながら感謝の念が湧く。
周りからは生活感がないと定評のある叔父さん叔母さんなら、若さの情熱を理解してもらえると感じたのか、皆のいないところで色々と相談を受けたが、親でもない私たちは、もちろん無責任なことは何も言えない。だた、結果はどうあれ、今やれることを精一杯やれ!という、陳腐な助言しかできなかった。しかし…
姪よ、君の気持ちが100%本物ならば、必要なときにきっと誰かが助けてくれるはず。思いが通じれば天が動く。こんな叔父さん叔母さんでも今までやってこられたのは、その気持ちがあったからなのだよ。辛いかもしれないけど諦めずに頑張れ!!

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記事を書いた人

まめの木

ドイツ留学後、紆余曲折を経て通翻訳者に。仕事はエンターテインメント・芸術分野から自動車・機械系までと幅広い。色々なものになりたかった、という幼少期の夢を通訳者という仕事を通じてひそかに果たしている。取柄は元気と笑顔。

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