インタビュアーというお仕事
前回、インタビューには対面と電話がある…と書きましたが、今週はその辺のことを含めた、“インタビュー”についての話をしたいと思います。
雑誌社等から依頼される対面インタビューは、文字通り、アーティスト来日中に直接会って取材をするのですが、この場合は、インタビュアーになったり、通訳に徹したり…と、ケース・バイ・ケース。そうして通常、会話を録音したものを自宅へ持ち帰り、起こすところまでが、こちらの仕事になります。
レコード会社から依頼される来日通訳の場合は、取材部屋に篭り、30分から1時間毎に訪ねて来るインタビュアーの通訳です。タイトなスケジュールの場合は、朝から晩まで、計10本以上もの雑誌&テレビ&ラジオの取材を、立て続けに数日間…ということも。最後はもう身体はガタガタ、声はガラガラ。質問内容も似たり寄ったり、同じことの繰り返しになりがち。そうすると“こんなことやる為にミュージシャンになったんじゃない!”と訴える人も、特にデビュー間もない人の中にはいます。ごもっともです。でもプロモも大事。ですから宥めたり、盛り立てたり、で、はい、何とかします。
またミュージシャン側に、“申し訳ないが、言い忘れていたことがあったら、通訳の段階で適当に足してくれないか”と言われることも度々あり。こちらも何本かやっていく中で、その人がどのような答え方をしたいのか、分かってきますから…。
ベテラン勢には、唸るような人が多いですね。繰り返し同じ質問をされても、その都度にこやか&丁寧に答えながら、どんなに長い1日でも、インタビューを楽しんでいる感じ。貫禄です。
そうそう、レコード会社側が忙しい場合は、手分けして、買い出しもやりますよ。喜んで! “ビッグマックひとり3個”という注文を受けたこともありますが、あの時はメンバーが5-6人いたので、帰り道、こちらの身体まで壊れそうになりましたっけ。あはは。余談。
一方、ここ数年特に増えているのが、電話インタビュー。つい先日も、午前1本、午後1本、夜1本、夜中(=明け方)1本と、立て続けに入り、おまけにその殆どが“質問内容もお任せ!”…という依頼のものだったので、その日は質問事項作成⇒インタビュー⇒質問事項作成⇒インタビュー…の繰り返し。で、その後の数日間は、ひたすらテープ起こしの日々。おまけに、これまた余談ですが、前々から予定していた信州方面への旅が、この間に入っていた為、とんでもなくヘロヘロな1週間となってしまいました。
“なんでそんなジェットコースター的スケジュールを立てるんだ?”と責められそうですが、はい、おっしゃる通り。でもこの電話インタビュー、なかなかの曲者でして。実は、ドタキャン&仕切り直しが多いのです。その結果、1日に集中し、今更降りることも出来ず、で、ズブズブ泥沼に嵌って行くわけです。
対面インタビューでしたら、日本サイドが彼等を取材会場へ“連行”し、そこから“逃亡”しないよう、“監視”できますが、電話インタビューの場合は、何せ“敵”は遠い海の向こう。どうにもなりませぬ。レコード会社にいる本人から電話が来る場合は、まず問題ないのですが(向こうサイドが“拉致”してくれますので)、こちらから掛ける場合は、あぁ溜息。通常“万が一の為に”マネージャー等の電話番号も貰っているのですが、それでもなかなか…ね。
仕切り直しに次ぐ仕切り直しで、4日間電話し続け、その都度、“ピッという発信音の後に〜”テープを聞かされ、で、5度目の正直でようやく掴まった…なーんてことも、ありましたっけ。その時の言い訳ったら、“ごめんごめん。パーティーやってた、エヘヘ!”。た…溜息。おまけに時差の関係で、真夜中だったり明け方だったり…で、こちらは万年時差ボケ状態。それに加え、対面インタビューとは異なり、その人の表情が見えない=御機嫌がイマイチ分からない…ので、話の持って行き方に戸惑うことも度々あり。また相手が、打ち上げ会場などの騒々しい所にいる場合は(〜ってゆーか、そんなところでやるなっちゅーの!)、声が聞き取り辛く、原稿書きの時に泣きたくなることも。そうそう、場内放送が聞こえるので、“いま何処?”と訊ねたところ、“ヒースロー空港。これからJFK空港へ向かう”という答えが返ってきた時もありましたっけ。音楽家は旅人ですからねぇ。あぁスリリング〜!
その日はこちらのインタビュー1本のみという場合は、特に、話が長くなり、30分の予定が気づいたら1時間…ということも良くありますし、1時間半やっても話が尽きず…で、“明日のこの時間にもう1度電話してくれ。続きをやろう。話したいこと、まだ一杯あるよ”と言われ、その2日目も結局、1時間半くらい話し込んでしまったことも。CM音楽にも起用されたことのある、某人気ハードロック・バンドのヴォーカルですが。
アメリカの著名な小説家の曾孫に当たるシンガーソングライターに取材した時は、物凄く感動しましたね。世界を旅した時の話や、曽祖父の小説について等々、話の面白かったこと。実は彼女の綴る甘く切ない歌詞は、曽祖父の文章と似た“匂い”がするんですよ! そう伝えたら、とても喜んでいました。
そうそう、先日電話取材した伝説のギタリスト、10代の頃から大好きな彼とは、いきなり食中毒の話で盛り上がってしまいました(ひどい目に遭ったそうで…)。で、始め良ければ…で、その後とても充実したインタビューが出来たのは、言うまでもありません。