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迷いの日々を過ごした後に

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通訳・翻訳者リレーブログ

音楽を聴くことが三度の飯よりも好きで、“死ぬなら絶対ツバキハウスのフロアの上!”(←これ、昔々、新宿三丁目にあったディスコで、日曜夜はハードロック&ヘヴィ・メタル・ナイトでした)なーんて思っていた人間が、その音楽の世界に身を置き、仕事をするようになってしまうと…。

好きなアーティストと仕事をし、好きな文章書きに明け暮れる日々ですから、最初の数年間は、それはもう単純に楽しくて仕方なく、美しい七色の虹を眺めながら、雲間を駆け巡っているような毎日を送っていた私です。が、そんな時期が過ぎゆき、色々な意味で落ち着いてくると、やがて聴こえてくる音も、見えてくる光景も、すべて一変してしまいます。そんな時期が、ちょうどフリーになった前後に、巡ってきました。

“音楽とはまるで関係ない世界に行きたい!”。ある時ふと思いました。特別な理由もきっかけも、何ひとつなかったのですが…。いま振り返ってみても、その時の心理状態はナゾのまま。とにかく、音楽のない世界へ行きたくなってしまったのです。“自分にはもっと色々な可能性があるのでは”…と、ちょっと妙な欲が出ていたのも、確か。
そうして始めたのが、複数のテレビ局での字幕翻訳。報道番組あり、スポーツ番組あり、ドキュメンタリーあり…と、分野に拘らず、何にでも挑戦してみました。この字幕翻訳以外にも、あれこれ色々とやりました。とにかく“音楽以外の世界なら何でも見てやろう”…と鼻息荒かったですね。そんなことが1年近く続いたでしょうか。

でもある日、今度は、音楽が無性に恋しくてたまらず、苦しくなっている自分がいたのです。“ここは私の居場所ではない”“ここでは幸せになれない”…と。この時も特別な理由もきっかけも、何もなかったのですが…。そうして結局、20歳の頃から慣れ親しんできた世界へ、あっさり舞い戻ってしまったわけです。
不思議なもので、私の周囲でも、“もう疲れた。業界から足を洗って、違う世界に行く!”と宣言し、しばし行方不明だった人が何人もいます。でも結局、たいがい、古巣へ戻って来て、何事もなかったかのように、昔のように幸せそうにやっています。もう何なんでしょうね、これって。
そうして今では、私が対訳をつけたアルバムのライナー・ノーツを、元同僚が書いていたり、インタビューの質問構成を、元ライバル雑誌編集部員が担当してくれたり、合同記者会見場で、20年来の知り合いに遭遇したり…ということが頻繁にあり、これが妙に嬉しかったりします。“お〜、みんな生き残ってるなぁ!”…と。

で、話が逸れてしまいましたが、そうそう、あの“音楽から離れていた日々”は、今こうして、楽しく充実した毎日を過ごしている私にとり、なくてはならなかった期間、神様からの贈り物だったのだと痛感します。あの1年間があったからこそ、自分が本当に愛する対象、目指すべきものが、はっきりと見えてきましたから。失って初めて気づく思い…。そんなところでしょうか。エヘヘ。

今後も、何かの時には、憧れの世界に飛び込んだ当時のこと、夢叶ったあの時の心のときめきを思い出し、川の流れに抗わず、そうして何よりも“直感”を大切にしながら、日々歩み続けたいと思います。
そう、最初に飛び乗ったその“石”が、その時、自分の為に、其処に在ったのには、きっと何か大きな理由があるのですよね!

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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