学生時代、つまり約20年前、北海道に忘れ物をしてきました。ずばり、マリモ…です。そう、瓶に入っている、土産用のあのコロコロした養殖毬藻。今は無き青函連絡船に乗る直前、函館駅のトイレの中に、置き忘れてしまったのです。
それ以来、ずっとずっと気になっていました。“あぁ、あたしのマリモ、今頃どこでどーしているのだろう”“親切な人に拾われて、幸せにやっていると良いのだけれど”…と。
“北海道なんて、すぐそこ。いつでもまた行けば良いのに”…って、はい、おっしゃる通り。でも、でも、あたしは大の飛行機嫌いでして…。あんなデッカイ鉄の塊が、空を飛べるなんて、未だに信じられません！　そりゃ、あたしだって、海外へ行く場合は、仕方なく、利用していますよ。今どき船で行くわけにもいかないからね。でも、ワインをうーんと呑み、音楽を聴くか映画を観るかしながら、気を紛らせ、顔を強張らせながら、もう必死です。ですから、国内旅行では、いっさい利用しません。陸路で行けるのに、こんなあたしが、なぜわざわざ…ってねぇ。
“暇はあるが金はない”学生時代は、沖縄を船で、京都をバスで、そうして北海道を国鉄で往復したほど。しかし、現在はもう、そんなノンビリ旅をしている時間などなく、しかし、でも、あの毬藻は気になる。そうして北海道へ、行きたくてたまらない！　というわけで、今年の2月、思い切って、飛行機に乗ってしまいました。

そうして、無限に広がる大地＆澄んだ空気に、すっかり恋してしまったのです。

というわけで、先週も行って参りました。今年2度目。今度は秋色の北海道へ。
夜中3時起床の4時出発…で、いきなり泡吹きましたが、でもすべては愛しの北海道の為。そうして約1時間半の飛行の後、鉄の塊は、無事、新千歳空港へ着地。
その後、引き続き陸路にて、長年の夢だった富良野＆美瑛へ。

で、あぁもう〜、なんて美しい処なのでしょう〜！！　幾色にも染まる丘々が、緩やかに重なり合うその光景を前に、もう言葉も出ませんでした。次回は農園B&Bのようなところへ連泊し、マウンテンバイクでゆっくり散策したいものです。【写真1】

翌日には、念願の知床へ。アイヌ語で“大地の果て”という意味の其処は、彼等が“神々の宿る地”と形容するだけあり、とてもとても、こころ惹かれる地でした。
昼はイクラ丼。それもぶっかけ放題！　Yippee！　そう、この北海道ったら、アイスクリーム、牛乳プリン、シュークリーム、とうもろこし、じゃがバター…と、誘惑が多くて大変です。
そうして夕刻、ウトロ港から小型船に乗ったのですが、夕陽を浴びて橙色に照らされた、海面と半島の、美しかったこと！　また港へ戻る途中、雨が降り始め、空が灰色がかった青色に変化したかと思ったら、薄霧の中から、突然、虹が顔を覗かせました。自然の織り成すその壮観なショウは、この世の光景とは思えず、本当に幻想的でした。“あぁ、地球って、いいなぁ〜！”　しみじみ思いました。【写真2】

そうそう、ヒグマに遭遇しました。日本で初めて。エゾシカにも。それから鮭の生息する河には、多種の鳥達が群れていました。そうして、何処までも続く原生林。同じ日本に、これだけの自然が残っているとは！
翌朝は、知床五湖を散策。空気感が、私の育ったカナダ西部の山岳地帯に似ていて、非常に心地よかったです。

その後、阿寒国立公園へ。阿寒湖、摩周湖、屈斜路湖のある、私の大好きな地。前回、2月に来た時には、此処で念願の“瓶詰め毬藻”を、しっかり手に入れました。あれって、水道水＆間接日光で、大丈夫なんですよね。自宅で、大事に大事に育てています。
それから、今回もまた、アイヌの木彫り細工にこころ奪われ、小物をあれこれ購入。彼等のアート、文化、神話、宗教観などに、イヌイットやネイティヴ・カナダ人のそれと、相通じるものを感じ、いつもゾクゾクします。

最終日、帯広空港から帰路に。着地直前、下界に広がる羽田空港近辺は、明かりが煌々としていて、それはそれで素敵でしたが、でも、この中にどっぷり漬かって生活している中で、知らず知らずの内に、失っているものがあるような気がしてなりませんでした。つまり、人間の心、本能とか直感とか、ごく原始的な、でも実は一番大切な、そういう諸々の部分…。闇夜に包まれた、自然の宝庫“知床”を思い出しながら、あれこれ思い巡らせてしまいました。

北海道の旅、次回は、来年2月：厳冬の知床半島、6月：初夏の利尻＆礼文島、7月：夏の富良野＆美瑛…の予定。まぁ、これ、あくまでも希望的観測ですが…。