我が心のランディ・ローズ
インタビュー&原稿書きの仕事を始めてから、気がついたら早20数年。
この間、色々なミュージシャンと接してきました。10代の頃、部屋にポスターを貼り、徹夜でコンサート・チケットを購入していたような人達とも、仕事をする機会に恵まれています。
それでも結局、一度も生ライヴを観ることもなく、仕事で会うこともなかった人もいます。
真っ先に思い浮かぶのが、ランディ・ローズです。
先日、ある友達から、“この本、面白かったよ! とりあえずちょっと…のつもりが、止まらなくなって、一気に読んでしまった”…という話を聞き、“そうだっ、私もそれ読もう”…と、さっそく手にした一冊がありまして…。
それが、『Off The Rails(オフ・ザ・レイルズ)』。
実はこれ、しばらく前に購入済みだったのですが、中央に散りばめられた、懐かしいモノクロ写真の数々を眺めている内に、何故かすっかり満腹感を覚えてしまい、そのまま本棚に放置してあったのです。
ですから今回は、“もしかしてこれ、天の声? 今のタイミングで読まなきゃいけないってことか?”…と感じました。いえいえ、その友達は地上に棲息する人ですが…。まぁとにかく、そんなわけで東野圭吾氏などなど、順番待ちの方々すべて後回しで、さっそく同書を開いたのであります。
そうして一気に、その世界その時代へと、舞い戻ってしまいました。
著者はルディ・サーゾ氏。
1950年、キューバ生まれ。“外国人がハードロック・バンドで活躍できるわけがない”と言われていた時代から、クワイエット・ライオット→オジー・オズボーン・バンド→ホワイトスネイク→ディオ……と、欧米の名立たるバンドで活躍のベーシスト。
10代の頃から、彼の来日公演は何度も観ており、その華やかなステージ・パフォーマンスが大好きだったのですが、幼年期にアメリカへ移住し、様々な経験をしているからか、とても心の広い、温かなその人柄にも、非常に惹かれるものがあります。
そんな彼の日記風自伝である本作は、主に、バンド・メンバーであり、親友でもあったランディ・ローズ、そう、私が出会うことのなかった“彼”について綴った作品なのです。
あぁ、ランディ・ローズ。伝説のギタリスト。私の中の数少ない“ギター・ヒーロー”。
1956年、カリフォルニア州生まれ。
クワイエット・ライオット、そうしてオジー・オズボーン・バンドで活躍していたのですが、82年、全米ツアー中に乗ったセスナ機の墜落事故により、短い生涯を閉じています。享年25歳。
クラシックの要素を取り入れた、メロディアスで抒情的で、哀愁を帯びた美しい旋律で知られる名プレイヤーです。
それに加え、ヨーロッパの森に棲む妖精のような、その甘いルックスにより、女の子の間では大変人気がありました。
10年以上前になりますが、ロサンゼルスにお住まいのお母さまにお会いし、ランディとの思い出話を色々とお伺いし、運営してらっしゃる音楽学校を見学し、ギターや楽譜などの遺品や、家族写真などを見せて頂いた上、花束片手にお墓参りをしたことがあります。
その時の模様は、当時ある雑誌で特集を組み、詳しく書きましたが、あの日のことは、人生の中の大切な大切な1頁として、深くこころに残っています。
あの頃の仲間達は、今でも現役で、元気にやっていますよ!
ヴァン・ヘイレンは再結成しましたし、チープ・トリックは先日、30年ぶりの“at BUDOKAN”を演り、当時からのファンが九段下に集結しました。ホワイトスネイクとデフ・レパードは、先日新譜を発表し、秋に揃って公演を行ないます。ドッケンも先日、ニュー・アルバムをリリースしましたし、アイアン・メイデンも来日公演を果たし、ベスト盤も出しました。それから“王者”ジューダス・プリーストの新譜も、間もなく聴けそうです。
私も今ちょうど、その中のあるバンドの、ロング・インタビューに取り組んでいるのですが、メンバーはまぁ意気盛ん、本当に面白い記事になりそうです。
そうそう、あなたの親友ルディ・サーゾも、現役続行中。今でもその華やかなベース・プレイで、世界中の人々を魅了し続けています。
みんな“いい年齢”に達していますが、その“勢い”“貫録”に触れるにつけ、本当に嬉しくてなりません。
そうして、思い巡らしてしまいます……。
ランディ・ローズ。あなたが生きていたら、今年52歳。
どんなギタリストになっていたのでしょう。
どんなバンドで、どんな音色を奏でていたのでしょう。
髪の毛をバッサリ切り、夢であったクラシック・ギタリストになっていたでしょうか。
あるいは、現役ロック・ミュージシャンとして、ワールド・ツアーに出て、我々日本のファンの前で、その水玉フライングVを披露してくれていたでしょうか。
2004年には、Guitar Center Walk of Fame(Walk of Fameロック版)の殿堂入りを果たし、ご家族の皆さんや当時のバンド仲間達が、記念式典に駆けつけました。
とても喜ばしいことなのですが、でも、其処にあなたがいないのは、何とも言えず、寂しい光景でした。
それでも、あなたがこの世を去ってから、26年経った今でも、当時のアルバム、そうしてその後リリースされたベスト盤などから、その美しい旋律が、色褪せることなく、聴こえてきます。
これは最高の贅沢、とても幸せなことですよね。
こころから、そう思います……。