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あの時代(とき)を忘れても、サザンオールスターズは忘れない

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通訳・翻訳者リレーブログ

30年程前、南米での生活を始めてまもない頃、友人が“このバンド、いま凄い人気なんだよ”…と、あるカセットテープを送ってくれまして。
で、すぐさま聴いてみた…次の瞬間……思いっきり仰け反ってしまいました………。

“な…な…な〜んじゃ、これゃ〜〜〜ぁ〜〜〜っ?!!”

だって……
何を言っているか、さっぱり分らない。日本語なのか何語なのか、それすら判断不明。タイトルからして、まるでナゾ。メロディーもハチャメチャ。リズムはちょっとブラジリアン、リオのカーニバル・テイスト。だけど、江の島のことを歌っているみたいだし……。
……遠い南米の空の下、意識朦朧としました。

でも、なにかこう、耳に残る、身体にまとわりついて離れない、そんな不思議な魅力を感じたのも、事実…。

それが、“サザンオールスターズ”だったのです。
そうしてその時に聴いたのが、彼等のデビュー曲「勝手にシンドバッド」。

でも、これは結局、一発屋だろうな。この一曲で終わりだろう。“風変わりなバンドの風変わりなシングル”。サークル活動、学園祭の延長。祭だ、わっしょい! 脳天気に楽しもうぜ! でも、ただそれだけ。翌年には“あの人はいま”。まぁそんなところだろう…。そう思ったものです。

その翌年に耳にしたのが、「いとしのエリー」。
まだ南米に拘束されていた頃。
デビュー曲とは打って変わり、うっとりするような、美しい歌詞&旋律のバラード。“えっ、あのメチャクチャ・バンドが、こんな曲もやるのか?!”。予想を思い切り裏切ってくれました。

トドメは、「チャコの海岸物語」。
無事帰国後。確か、受験の頃。
ちょっと甘酸っぱく切なくて。それでいて、色々な意味でエロエロ桑田さんらしさが見え隠れ。
これで一気にハマりました。

そうして学生生活突入。バンド活動にちょっとだけ興味のあった私は、彼等が出た軽音楽サークルを覗いたりもしました。
そう、“ベターデイズ”。名作「Ya Ya(あの時代〈とき〉を忘れない)」の中で、“目に浮かぶのは〜♪”と歌われている、あのサークルです。
“互いにギター鳴らすだけで分かり合える友”。あれには妙に憧れました。それから、桑田さん&原さんという、とても素敵なカップルにも…。
残念ながら、当時のこぢんまりした可愛らしい“涙のチャペル”は、もう存在せず。跡地には、“あんなもの前にして涙する人はいないだろう”と思うような、巨大なコンクリート・ビルが建ち、チャペルはその中に、遠慮気味に収まっています。
それにしても、なんて美しい曲なのでしょう。
早く卒業して、音楽&雑誌作りに専念したかった私には、“美しすぎるほど忘れられぬ日々”など皆無ですが、それでもこの曲を聴くたび、あの4年間のキャンパス・ライフを思い出します。
心にじんわり染み渡る、私が最も好きなサザン・ナンバーです。

その後、雑誌社時代の思い出の1曲と言えば、「逢いたくなった時に君はここにいない」。
うーん、ちょっとイタイ歌です。

それから、「真夏の果実」。
桑田さん初監督映画『稲村ジェーン』の主題歌。
同映画で華々しくデビューした俳優・加勢大周を、社を上げて応援していた関係もあり、今のように暑い真夏日に、同僚御一行様で観に行った、思い出深い映画&楽曲。耳にするたび、当時のひとコマが鮮やかに蘇ってきます。
真夏というよりは、祭りも花火大会も終わり、移ろいゆく季節を実感する、ちょっと物寂しい時期に、なぜか聴きたくなります。

そうして退社直前に聴いていたのが、「涙のキッス」。
“マザコン男・冬彦”が強烈印象の、TV連ドラ『ずっとあなたが好きだった』と、イメージがダブってしまう嫌いがありますが、あのカップリングにより、大ヒットしたバラード・ナンバーです。

その後、フリーになってから耳にした曲といえば、もうこれしかありません。そう、グループ史上最高のヒット・ナンバー、「TSUNAMI」。
2000年日本レコード大賞受賞曲です。
“人は誰も愛求めて闇に彷徨う運命”“めぐり逢えた瞬間から魔法が解けない/鏡のような夢の中で/思い出はいつの日も雨”…等々、非常に抒情的で独特な歌詞が印象的。“ソングライター”としての桑田さんの凄さに、改めて唸ってしまいます。
私の心の中では、彼はずっと、“和製ポール・マッカートニー”なのですから! そうして余談ですが、英語の発音も、非常に美しい!

……と、ご覧の通り、思い出すのは超メジャー・ヒット作ばかり。すべてのシングル&アルバムを完璧にフォローしていたような、熱心なファンではありません。また海へ向かう時に、車中でサザンを聴くような人間ではありませんし(だいたい、海よりも山へ向かうタイプだし…)、だいたい、その時々に流行った曲を聴いては、思い出に浸り涙するような、可愛い女でもござんせん。
それでもこうして振り返ると、人生の折々に聴いていたサザン・ナンバーが、必ずあることに気づかされます。
意識したことはないけれど、でも常に、ふんわり身近にあった音楽、日々の生活に寄り添ってくれていた音楽なのですよね。
どの曲も、とても懐かしい匂いがします。

そのサザンオールスターズは、先日、シングル「I AM YOUR SINGER」を発表しました。これは、“30年の間に出会った人々に対する感謝の気持ちを込めた歌”であり、活動休止前最後の曲とされています。
しかし何年かの後に、必ず、彼等はまた素敵な歌を引っ提げ、我々の前に戻って来ることでしょう。きっと。
それまではファンも変わらぬ想いで、待ち続けていますよ!
もちろん、この私も……。

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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