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仕事選びの基準

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通訳・翻訳者リレーブログ

皆さんに、色々なところで、よく訊かれることがあります。
それは、“仕事はどうやって選ぶのか?”“選ぶ基準はあるのか?”

答えは至って簡単です。はい、“基準”はしっかりあります。
ずばり、“好きか嫌いか”“ソソられるか、ソソられないか”。

つまり、“この作品とても好き”“彼等には頑張って欲しい”。心底そう思えるもの。何かを感じるもの、感情移入できるもの。
そういうものを選んでいます。

そう、仕事は思い切り、我が儘に選んでいます。そうしないと、楽しめず、集中できず、こころ此処に在らず…となってしまいます。それでは、そのアーティストや作品、レコード会社や媒体に、非常に失礼ですから。
まぁ、レコード会社も雑誌社も、それぞれの通訳翻訳者の“クセ”を把握しているので、“ストライクゾーンから驚くほどハズれた仕事”は、そうそう回っては来ませんが…。

因みに私の専門分野は、このブログでも何度か書かせて頂いているとおり、ハードロック&ヘヴィ・メタル。それから女性ヴォーカリストもの。それが殆んど。
フィーリング重視のミュージシャンや、こころに残るメロディーのあるサウンドが好き。スコーンと突き抜けた、楽しく心地好いもの。真っ直ぐで、分かり易いものがいい。
歌詞で言うならば、情景描写の素敵なもの、心理描写の美しいラヴソングなどが好き。逆に、頭で理屈っぽいことを考えているアーティストや、メッセージ性や政治色の強いもの、内省的な歌詞は、得意ではありません。

アメリカ・アリーナ級バンドや、LAメタル系アーティストは、概して陽気で楽しいから、好き。ベテラン・ロック・ミュージシャンも、人間味溢れた紳士的な人が多いので、とても好き。
仕事に真摯に取り組んでいる、才能溢れるアーティストは、どんなタイプの音を奏でていようと、普段どんなにだらしのない問題児であろうと、物凄く魅力的で惹かれます。

とにかく、
心地好いもの、幸せ感じるもの、楽しいものがいい。それは音楽に限らず、芸術全般に言えること。
そういうアーティストや作品のプロモーションは、喜んで引き受けます。目一杯力が入りますし、とことん応援したくなります。

…と言いながらも、しかし……

たとえそのアーティストや作品は、“いまいち、うーん”…だとしても、話を持ってきてくれた、レコード会社ディレクターや雑誌編集部員が、好きな人だったり、20年来の知り合いだったり、その人率いる班だったりすると、“おぉ、喜んで!”…となってしまいます。泣かれると尚更のこと、それがどんなにタイトな条件下でも、“はいはい、任せなさい!”…と、迷わず引き受けてしまう。
で、考えてみると、仕事相手に嫌いな人は殆んどいないので、こうして承諾してしまうことが、多々あったりするわけです。

しかし、そうすると言うまでもなく、大変なこともそれだけ増えます。
例えば、ギリギリになって入ってきたもの。バタバタしなければならない仕事は、心臓に悪いし、どうも性に合わない。時間があれば良いというものでもありませんが…。でもじっくり腰を据えて取り組みたい。
それから、“結果的に”キツイ進行になってしまったもの。これまた大変、そうして良くあること。

特にインタビュー。ご本人が来日中の場合には、滞在先ホテルやレコード会社の会議室に、“監禁”しておけるので、まぁ“体調を崩した”…という場合以外は(或いは“今日は何となくやりたくない!”という駄々っ子も、たまにはいますが)、すべてスケジュールどおりに進みます。しかし問題なのは、電話インタビュー。何せこの場合、相手が居るのは、“この地球上のたぶん何処か”なわけですから、色々と問題が……。

例えば、先週後半にあった1本。
最初の予定日が流れ、仕切り直し。で、数日後に無事再セッティング(まぁここまでは、良くある話)。しかし同日。ギリギリまで相手サイドが捕まらず、最終電話番号を貰えず。1度だけ現地レコード会社側から、“まだ追っかけている最中ですぅぅぅ〜”…との泣きの電話が入り、“今日もナシか?”…と殆んど諦めていた…その時…予定時間(因みに真夜中1時)の僅か10分前、再びレコード会社から電話が:“これから出来ることになりました! 今から言う番号へ、ひとつよろしく!”。……って、ひぇぇぇ〜〜〜〜っ!!
過去には、延期に次ぐ延期で、結局“4度目の正直”で、やっと繋がった電話インタビューも、そう言えばありましたっけ。嗚呼。

でも、そんなこんなでも、〆切というものは、待ってはくれません。アルバムや雑誌発売日を延期することなど、絶対に出来ませんからね(その辺の事情は、元編集部員ゆえ、痛いほど理解してもいます)。
が、そうすると、物凄い勢いで、原稿書きをする羽目になります。そうして言うまでもなく、その日にやる予定でいたものは、すべてスッ飛びます。火曜迄の原稿は水曜になるし、水曜迄の原稿は、木曜や金曜迄待たせてしまうことに。友達と遊ぶ予定は、泣く泣くドタキャン。読みたい本の山は、高くなる一方。
こんなこと心身ともに悪いし、原稿の出来だって心配になってきます。

“仕事なのだから、何でも引き受け、どんな条件下でも、完璧にこなさなければならない”。
はい、確かに。それも一理あると思います。特に駆け出しの頃は…。柔軟性のある対応、来たもの拒まず、何でも無我夢中で取り組む姿勢は、とても大切なこと。そういう時期は、絶対に必要です。自分の栄養となりますし、後々の世界も広がってゆきます。

しかしです、
体力と勢いだけが頼りの20代は、もうとっくに過ぎ去ってしまった身としては……

“どんなことでも引き受けられる、こなせる”。いっけん聞こえは良いのですが、でもそれは、“何でも聞いてくれる都合のいい便利な人”…とそうとう紙一重。
相手に合わせて何でもやることは、時として自分を失うこと。自分の首を絞めることに成りかねません。その辺のことも、心に留めておきたいもの。

とは言いつつも……

アーティストとその作品、担当ディレクターや媒体、〆切などの条件などなど。
自分の好きなアーティスト。心底やりたい仕事。無理してでもやるべきもの&そうではないもの。現実的に出来ること&出来ないこと。その上手いバランスの取り方。見極め。
答えの出ない、これは永遠に悩み続けることなのでしょうね……。

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記事を書いた人

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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