今年への想い、来年への願い
2011年。振り返り、出るのは溜息ばかり。いやはや、大変な一年でありました。
音楽業界では、アルバム発売延期、コンサート延期&中止続出。いざという時、音楽って何て無力なのだろうと、何とも言えない気持ちに。
この世界に、25年ほど潜んでおりますが、こんな一年は、まるで初めてのこと。いや、40ウン年生きてきたけれど、こんな年は、これまで経験したことがありません。
って、それもそうだ。500年とか600年に一度の、天災だというのだから。
だからもう、当分起きることはない。安心しなはれって。まあ、それはそうなのだろうけれど。しかし、震災だけではないしなあ、今回のこれは…。
だいたい、その滅多に起こらない事態に、こうして遭遇してしまった我々は、そんな時代に生まれてしまった我々って、いったい何? その意味は? これも運命? だとしたら、どう受け止めればいいのでしょう?
そういえば、今年の言葉は“絆”だとか。
しかし、しかし、清水寺で書き出されたあの瞬間、“ああ、やっぱり”と思いながらも、正直言うと、ガッカリもしました。
まるで予定どおりだったから。まあ、それも勿論ありますが。でもそれ以上に、そもそもこの言葉、どうもイマイチ心落ち着かない。
いえいえ、否定するわけでは、全然ないのですよ。それ自体は、ステキな言葉ですもん。
だけれど、こういう状況下で、こうも短い期間に、こうも声高に連呼されると、これが別の何かに化けてしまう…と言うか…感じ方が違ってきちゃう…と言うか…。
とにかく、イマイチ落ち着かないのであります。
あっ、でもちゃんと理解はしているんですよ。言葉が生ものだということを。言葉は時の流れの中、形が重みが、変わっていく。それは当たり前のこと。それがまた、言葉の面白い点でもあるわけですし。
でも、うーん、なんだかねぇ…。
さあ隣の人と、仲良く手を繋ぎましょう。同じこと考えましょう。同じ歩調で、同じ方向へ進みましょう。みんなに親切にしましょう。気を遣いましょう。
繋がりましょう、繋がるのよ、繋がらなければならないのだよ。そこのきみも、そこのきみも……と…。
そうしないと、例の“KY! ”“KY!”の大合唱。強制的で排他的。窮屈で息苦しい…ってゆーか。
“絆!”“絆!”“絆!”
…って、昔の道徳の時間を、思い出すなぁ。
何でだろう。
まあ、愛国心とか正義とかあなたはヒーローなどと、一斉にまくし立てられるよりは、よっぽど健全な気するけれど。
とにかく、手を繋がず、輪の中に入らない者が、非難・廃除されませんように。ひとと違った言動も、ちゃんと受け入れられ、認め合える社会であることを。いいひと演じる必要など、まるでないのだから。
こころに余裕を、柔軟さを、みんなもっていられるように。こんな時代だからこそ。
なーんてこと、いまどき言ったら、“ヘソ曲がり”とか、“ヘソないんちゃうか”とか、“それでも日本人かい”…などと、言われそうだけれど。
って、まあいいや。
ちなみに、わたしが好きなのは……
まずは—“和”。
対立せず、争わず、調和のこころを保つこと。
アイマイミーな人種でもなければ、征服の民でもない者の、こころにすっと染み込む、穏やかで柔らかな音色がします。
それから—“想”。
こころの中、想い浮かべること。遠くより密やかに、想い馳せること。
今年ほど色々なことに、色々なひとに、この国その未来に、これだけ想いめぐらせた年は、過去にありませんもん。それは実際に何処かへ行き、誰かと会ったとか、何かをしたとか、そういうことでは、必ずしもなく。
ところで、冒頭の音楽業界の話に、少し戻りますが…。
こんな時代、芸術に、何の意味があるのだろう。音楽に、いったい何が出来るのだろう。そんなことをずっと思い、悶々としていました。出来ることなど、何もないんじゃないか…と、最初の頃はガックリ、脱力感に襲われたり。
でもやっぱり、辛いことがあったら、それを一瞬だけでも、忘れさせてくれる。一瞬だけでも、笑顔もたらしてくれる。音楽は、そういう役割を果たしてくれるんじゃないかと。そうあってほしいなと、ちょっと思っています。
ひとは、深い穴に落ちてしまったら、自力で這い出すしか、助かる術はありません。しかしその間、上空に薄明かりが見えたなら、目指すべき方向が分かり、前進する意欲が湧いてくると思います。
音楽が、その上空の薄明かりになれば…と。
そうでないと、こうしてずっと、音楽に携わってきた者としては、悲しくて仕方がない。
とにかく、本当に色々とあった2011年。
でもこの月日を、けっして無駄にしたり、忘れたりしたくはない。
明日へ向けての、未来を切り開く為の、原動力やヒントとなることを。この国&国民が、前へと踏み出せますよう。
ひとりひとりが、この国を想い、関わり続けられることを。指図されず、急かされず、義務化されず。ひとの顔色を伺い、ビクビクしていなければならない、そんな社会にだけは、絶対になって欲しくはない。
それぞれが、それぞれの方法、それぞれのペースで。それで十分いいのだよ…という雰囲気に溢れた国で、今後ともあり続けてほしい。
来年こそは、日本&日本国民にとり、幸多き一年でありますように!
↓ これは先日足を運んだ、都内某所。静かで厳かなひと時を、過ごして参りました。