リスペクト〜この素晴らしき世界
出逢いを大切に、相手を思いやり、
ひとつのことを、こつこつと、
シンプルな日々、その積み重ねを。
生きるとは本来、そういうもの、
とても地道で、原始的なこと。
なのにひとは、
虚栄心や自尊心、競争心や嫉妬心、
そんなこんなに、限りある時を費やし、
鎧かぶり、垢まみれになってゆく。
流れにあらがい、物事を難しく考え、
すべてを複雑にしてしまう。
そうして思い悩み、戸惑い苦しむ。
この地球上の、何処かに、
自分の居場所が、大切なひとが、
誰にも必ず、存在する。
人生とは、その地を探す長い旅。
変わらぬ風景。
かつて暮らしていた、その場所は、
光も色も、音も匂いも、何もかも、
褪せることなく、あの頃のまま。
人生という名の旅の中、
其処から遠く離れたところで、
こうして暮らすようになり、
その地に、いまは立っていないけれど、
その空間の何処か、わたしは確かに存在する。
そうして、この心の中にも…
その風景はいつも、穏やかに息づいている。
旅の途中、道に迷いそうになった時、
心の中に在る、その光景は、
背中を優しく撫でる微風となり、
荒波の前に立つ防波堤となる。
行く先々をそっと照らす、灯台でいてくれる。
写真とは、自分たちが、
そうしてこの世を去った、愛する者たちが、
その時その瞬間、其処に、確実にいたことを、
喧嘩しては、仲直りしたこと、
一緒に泣き、一緒に笑ったこと、
同じ時間を共有したことの、
その確かなる、あかし。
どんな時にも、こちらを励ましてくれる、
とても温かく、とても貴いもの。
過去を振り返り、未来を想う、
未来を見つめながら、過去を偲ぶ。
いまのこと、これからのこと、
ひとにとり、大切なものを…。
人物作品集『RESPECT(リスペクト)』。
出逢いと戯れる旅人の、
柔らかな視線、その先にある、
カナダやヨーロッパの、
豊かな暮らし、凛とした人々。
季節が幾度も、めぐっては去り、
歳月が幾織りにも、紡がれようと、
その時その瞬間は、写真の中、
永遠に輝き続けよう。
このモノクローム世界に、こころからの感謝を、
この世のものすべてに、敬意を!
*敬愛する写真家、吉村和敏氏の人物写真集『RESPECT(リスペクト)』、只今絶賛発売中。