ジレンマ! ジレンマ! ジレンマ!
何だか最近、すれ違いが続いています。
先日、個人的に世界で1番好きな、某キング・オヴ・ヘヴィ・メタルの面々への、インタビュー&原稿書きの依頼を受けました。“明日、急遽やることになった”…と。
その頃の私はと言えば、シカに話しかけつつ、暢気に奈良公園をフラフラしていました。よって、“翌日”など、どうにも対処のしようがありませんでした。
数日前、個人的に世界で3番目に好きな、某ギタリストのインタビューの依頼を受けました。“今晩、急遽やることになった”…と。
その頃の私はと言えば、“気分転換に”…と、デイバック背負い&マウンテンバイクに跨り、近所を徘徊していました。よって、携帯が鳴っていることにさえ、気がつきませんでした。
ああ、いつも担当しているのに! やりたかった!
先日、仕事の合間に書いた某コラム。
本当は、例えば、街中を散策中に目にした、ちょっとしたものや感じたこと、そういうありふれた風景、ありふれた日常を、さらりと文章にするのが理想。でも、原稿書きで引きこもりの日々が続くと、それだけ視野が狭くなり、その結果、“私の目標は”とか、“仕事のあり方は”とか、“どう生きるべきか”などなど、押しつけがましく理屈っぽく、妙に力の入った、私の嫌いなタイプの文章に、どうしてもなってしまいます。
ああ、ジレンマ。
ちょっと前にやった、新作プロモ用の資料翻訳。
その内容は、政治・世界情勢に関する長文。よって、インターネット等々を通して、関係国の政治を読み解きつつ、通常は触れることのない用語と向かい合いつつ、自分の語彙の少なさを痛感しました。
他の多くの通訳翻訳者とは異なり、私は自分の好きな世界にどっぷり漬かった日々を送っています。好きなアート第一。その世界あってこそ。“言葉”“第二外国語”は、あくまでも、その中で生きていく為の“道具”なのです。
自分の専門分野があり、その世界に関する知識が深まれば深まるほど、それはつまるところ、他の世界には疎くなると言うこと…か。偏ってしまうと言うことなの…か。
まあでも、それはけっして、悪いことではないとは思うのですが…。
“この業界の常識は、他の業界の非常識”。
この世界に浸り、この世界の人たちと付き合っている限り、感じないことではありますが…。
そんなことはさて置き——
得意ではない分野でも、積極的に引き受け、取り組み、新しい世界を切り開いて行くべきか。それとも好きな分野を、とことん追求し続けるべきか。
興味のないもの、自信のないものは、迷わず断るべきなのか。
でも人生せっかくだから、楽しく仕事がしたいわなぁ…。こころの負担になるようなことは、極力避けたいもの。
どんなに酷い状況下でも、仕事の出来る人、何でも引き受けてくれる人。そういう人になるべきか。それとも、無理はしないけれど、でもひとつひとつ丁寧に当たってくれる…という人になるべきか。
“2時間後の電話インタビューなのですが”…と突然の依頼。
かと思えば、真夜中過ぎ。やっと1本入稿し、“さあ寝よう”…と思っていたところの、いきなりの連絡。“明け方の電話インタビューを、1本頼めるだろうか”。
……って、こういうこと、アリですか?
そんな場合でも、“はいはい、お任せを!”…と引き受けてしまえる人間を、“プロフェッショナル”と呼ぶのだろうか…。
つい数日前のこと。
1日に3件、素敵なお話を立て続けに頂きました。でも、しばらく立て込んでいた為に、その3件とも引き受けられず。
しかし…お断りしてから、“やっぱり頑張って、ちょっと無理してでも、引き受ければ良かったのでは。この不況下、仕事の話があるだけでも幸せなこと。無理してでも、やるべきだったのでは。やろうと思えば、何とかなったのではないだろうか”…と、ちょっと自己嫌悪、ちょっと後悔。ちょっと悶々としてしまいました。
でも、やっぱり、詰め込み過ぎて良いことなど、絶対にない…はず…。
……と、ああでもない、こうでもない。自分らしくない。
来日インタビュー・通訳のスケジュールは、往々にしてギリギリまで見えないもの。つまり、スケジュールは(比較的先に出る)アルバム歌詞対訳やプロモ関連の仕事で、どんどん埋まっていきます。従って、その後に入ることの多い、“来日関連もの”を嵌め込む余裕が、なかなかない。思うようにはいかない。“どうしてもやりたい!”と思っても、話を頂いた時点で、スケジュールがもうパンパンで、どうにもならない場合が多いわけです。
あれもこれも無理に入れるとしたら、それはもう最終的には、寝る時間を削るしかない。でも、そんなことをしてまで、引き受ける意味はあるのだろうか…。それがどんなにやりたいことであったとしても。
えっ? 寝る時間を削る? いえいえ、それだけは絶対にしたくはない! だいたい、そうしたら、ひとつひとつの仕事が、半端な仕上がりになってしまうのでは…。“完璧”を目指す者としては、それだけは避けたい。
ああ、でもやっぱり……
タイトな条件でも、無理してでも引き受けるべきか。
いや、それとも……
無理はしない、余裕のある日々の中で、完璧な仕事を目指すべきか。
ああ、ジレンマ。
大きな仕事の予定が入っていた為に、その後に入った仕事を、3つも4つもお断り。その直後、その大きな仕事がドタキャンに。で、結果、その数日間やることがなくなってしまう。そういうことも、時々あります。
2週間先は闇。なんてこった。
ひとつ引き受けた仕事の直後に、何が何でもやりたい仕事の話が舞い込むことも。でもフリーランサーの場合、来た順に引き受けるのが礼儀。基本的に。
そうして、やりたいものが、順に入って来るとは限らない。当たり前な話ですが。
ああぁあああ〜〜!
あるいは、例えば、
仕事が次から次へと入って来て、そのどれもこれもが、どうしてもやりたいものばかりだったので、感情の赴くままに、次から次へと引き受け続けていたら、その後しばらく、ジェットコースター的日々を過ごすことも。
ああ、思いきり体調を崩しちゃいそうです。
そうそう、
インタビュー1本は、通常30分、長くても60分内に収まります(…に収めなければならない場合が多い)。ですから、そのように計算しながら、起こし&原稿書きのスケジュールを立てます。
しかし気が合い、話が盛り上がり、1時間半以上のロング・インタビューになる
とも、少なくはありません。そうすると、その後の数日間はグチャグチャ。
かと言って、すべて1時間半になることを想定し、最初から原稿書きの時間をもうけていては、無駄の多いスケジュールになってしまいます。
それで思い出しましたが、
先日担当したアルバム歌詞対訳。オペラ仕立てで、通常の作品とは異なり、どのくらいの日数がかかるか、うまく読めず。最終的には、時計の針のカチカチ音を気にしながらの、物凄くスリリングな数日間を過ごす羽目に…。
ふ〜〜〜。
仕事は、客観的に冷静に、距離を置きつつやる必要があります。ある程度は。
しかしそれでも、例えば歌詞対訳の場合は、特に、相性というものが大なり小なりあります。思いきり感情移入できるものの場合は、気がついたら、アルバム1枚分、美しく仕上がってしまっていることもあります。逆に、何日間も向かい合っていても、その世界の表面を浮遊しているだけ。いまひとつ入り込めず、納得できない場合もあります。
ああ、じれったい。
とにかく……
スケジュールの立て方って、本当に難しい。
フリーランサー、最も大変なのは、この仕事選び。正確に言えば、スケジュール調整。そんな風に思っては、いつも溜息を吐いてばかりいます。
ひとつひとつを、予定の中にきれいに組み込めれば、仕事も半分成功したようなもの。そう断言しても良いと思うほど。
でも、何だかんだ言っても……
やっぱり最終的には、“愛”……ですかねぇ。
アーティストやその作品に対する“想い”がなければ、上手くはいかないし、だいたい、それがなければ相手に失礼だから、最初から引き受けるべきではない。
……と、今週はこんな感じで、まとめたいのですが……(^_^)v