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わたしはなにするひとぞ

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通訳・翻訳者リレーブログ

時々、こんな質問をされます:

“肩書きはなに?”
“職種はなに?”
“なにやっているの?”

うーん。
そのたび、返答に困ってしまいます。

肩書き。
結局、なんなのだろう?

じっくり観察したことのなかった、自分の名刺。
改めて見ると、そこに印刷されているのは、“通訳・翻訳”。

確かに。
最初に作った時、これしかない…と思ったし。

職種。
確定申告の用紙に書かれているのは、“文筆業”。

まぁねっ。

フリーになった最初の年の申告時、職種の欄には、“通訳業”も“翻訳業”も、見当たらず。“さてどうしたものか”…と思いながら、同じような仕事をしている、業界友人たち数人に確認したところ、みんな“文筆業”にしている…とのこと。
それでわたしも、そのまま右に倣え。で、それからずっと、そのままになっている…ということ…だったような。わたしの記憶が確かならば。

でも、うーん。
確かに、文章を書いてはいる。けれど、なんだろう、この居心地の悪さは。
だって、実際にやっていることと言えば……

ミュージシャンへのインタビュー(質問事項作成含む)、テープ起こし、記事書き、アルバム歌詞対訳、バイオ翻訳、来日ミュージシャン通訳・お守……などなど。
とにかく、長い話を短くすると…
ミュージシャン&その新作のプロモ、英語や言葉に関することの手伝い、あれやこれやそれや。

例えば、先週は……
主に、月曜&火曜は、インタビュー用質問事項作成⇒インタビュー⇒テープ起こし&原稿書き。
水曜は、海外音楽ライターによる、野外ライヴ・レポートの英日翻訳。
木曜&金曜は、同上のライターによる、インタビュー原稿の英日翻訳。

…と、上記5日間は、すべて音楽業界の仕事。音楽雑誌編集部員&レコード会社担当ディレクターからの仕事。

ところが……
土日の相手は、ミュージシャンではなく。つまり、対象はアルバムや、それにまつわる宣伝ではなく。

ある作品に綴る、短い英語の一文を、紡ぎ出すこと——。

そのアーティストのこころの声、その想いに、じっくり耳を傾けつつ、その作品を眺めつつ…。
そうして、思いついた単語&フレーズを、思いついた瞬間に、持ち歩いているメモ帳や、あるいは携帯メールに書き出す。
そうしてその夜、1日の間に綴ったものを、再確認しつつ、使えそうな一文や言葉を、候補として、ワード・ファイルに書き出していく。

そうやって書き出しながら、“これはやはりピンとこないな”と思うものは、どんどん削っていき、“これとこれを繋げた方がいいな”と思うものは、どんどん書き直し改める。
そうやって、どんどんいじり、磨き、手を掛ける。手を掛ければ掛けるほど、よくなってくる。
でも、と同時に、考えれば考えるほど、細かいところまで、同じくらいに、色々と気になり出すのも、確かで…。
だからまた更に、手を掛け手を掛け、整えていく。

ごく限られたスペースの中に入る、僅かな数の単語…を生むために。

どんな場合にも、ひとつひとつの言葉を大切に、丁寧に向かい合いたい。とことん拘りたい。自分がその時々に持っているものを、150%くらいは絞り出し、取り組みたい。そうしないと、その後にあがった活字、その作品を見た時に、嫌な思いをするに決まっているから。
力を抜いた瞬間が、少しでもあると、それはその活字や作品に、はっきり表われる。“あの時に自分の持っているもの、すべてを出し切らなかった。もっとできたはずだ”…と思うようなこと、後悔だけは、絶対にしたくはないから。

それが例えば、自分の文章や作品だったら、まだ良いけれど。まぁ正確に言うと、けっして良いことではない、が、でも、とにかくその場合、困るのは自分だけ。
でも、取り組んでいるのが、他のひとの生み出した作品の場合は、話がまるで違ってくる。その相手&作品を汚すことだけは、絶対にしてはならないわけで…。

……で、とにかく、先週の土日の話。

そんなこんなで、ワード・ファイルに書き連ねた“候補たち”を、いったんアーティスト側にメール。
そこから御本人が、気に入ったものを幾つか選び出し、それにコメントをつけたものを返信。
そうやって選び出された文&コメントに対し、こちらもまた、あれこれ考え手を加え、コメントをつけて、またメール。

そうやって、朝に晩にと、何度かのメールのやりとり。

そうして最終的に、3—4つに絞り込み。
で、また、その3—4つを、再びちょっと磨き書き直す。

でも、でも…
そんなこんなをやっていく内に、自分たちでも、だんだん分からなくなってきて……(-.-)
それで結局、“出版社の方、そうしてデザイン担当者にも、御意見をお聞きしよう”…と言うことに。

そうしてようやく決定した、納得のいく一文。
その頃、くだんのアーティストは、海外出張へ向け、成田空港搭乗口近辺に。
よって、“ギリギリ日本にいる間に決まった!”…とホッとした……

……のも……

……つかの間……。

あぁぁぁぁぁぁあ〜〜!!

実は、どうしても気になり始めた箇所、正確に言うと、ある短い単語ひとつが、このわたしにあって…。
“この単語、ちょっと誤解されないかな”“アーティスト側の想いに、果たしてちゃんと寄り添っているかな”…と。

で、また、ああでもないこうでもない。海外の友だちにも、ちょっと意見を求めたり。
で、夜が白み始めた頃。
“うんうん、これでいい!”…と納得できた瞬間、再びアーティストへメール。言うまでもなく、その頃の御本人は、機上のひと…どころか…すでに出張先に到着したあと。

——で、やっと、今度こそ、決定!!
本当に。

ああ、けど……
これすべて、短い一文、正確に言えば、単語7つを生み出すため。

ふ〜〜。
でも、燃えた、燃えた。
そうして、とても素敵な一文が、できました!
しかし楽しいですねぇ、こうした“言葉選び”は…。いつもワクワクします。

で、さぁ、これから4日ほど、今度はアルバム歌詞対訳作業です。

で、そうそう、再び例の冒頭の質問……。
でも、ここまで書きながら、その答えは…まるで出ない。出ないどころか、こうして書いている内に、ますます分からなくなってきた感あり。嗚呼。

結局のところ……
自分のできること、やりたいことを、その時々に一緒に組みたいひとと、それができ

時に、迷わずやること。
それがわたしのやっていること。
それをなんて言うのか、職種とやら肩書とやらは。そういうことは、よくは分からないし、だいだい、仕事だという感覚さえないし…で…。

でもまぁ、“これでっ、いいのだぁ〜♪”……と、自分では納得しています。

Written by

記事を書いた人

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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