翌日に〆切を控えた切羽詰まったある日のこと
あぁぁぁあぁぁあああ〜〜〜!!
先週の携帯怪奇現象に続き、今週はテープレコーダーが、怪奇現象を起こしてくれました。
夜中、インタビュー・テープを起こしていた時、突然(はい、突然に…です)、巻き戻しができなくなってしまいました。はい、ボタンをいくら押しても、うんともすんとも言わず、まるで反応せず。慌てて停止ボタンを押すも、こちらもやはり、うんともすんとも言わず、まるで反応せず、テープは黙々と回り続けるばかり。では…と、早送りボタンを押してみるも、これまた、まったく同じ反応で…。
慌てて蓋を開けて、やっとテープを止めた…という有り様で…。
こんなこと、あれこれやっている内に、テープが切れてしまったら…。それほど恐ろしいことはなく。
焦るわたし。
けっきょく、作業をいったん中断。
さぁ、どうしよう。
でも考えてみれば、これ、もう10数年使っている代物。それも毎日のように、休みなく酷使し続けていたわけで。だから“もう限界かな”…と思いながら、予備のテレコを久々に引っ張り出し、使ってみたのですが、これまた時々止まったり、巻き戻しも、通常の3倍の時間がかかったり(1/3倍速??)…とその動き、怪しいったらありゃしない。
そんなことしている間に、〆切は刻々と迫っているし。
焦るわたし。
そもそも、なんで今の時代、テープレコーダーなのか?
そう聞かれそうですが、でもこの業界、みんなけっこう、今でもこれ、使っている人が多いんです。自分もこうして愛用していますし、時々頼まれる、編集者や評論家が行なったインタビューの起こしも、その10本中9本は、テープの状態で送られてくる感覚です。
“どうしてだろうね?”と、何人かの同業者と、話題になったこともあるのですが、“ちゃんと回っているのが、目で確実に把握できるし、知らない間に、消してしまっていることもないし、で、だから安心できる”…というのが、その時のみんなの感想でした。
“CDの良さってあるけど、でもやっぱLPって最高にいいよね”…と言うのと似た感覚…か(違う…か…)。とにかくみんな、どっぷりアナログなのであります(わたしを含めて)。石器時代とか北京原人とか、なんと言われようと…。
で、話を戻して——
取り敢えずは、アマゾンを覗いてみたところ、同じシリーズの最新モデルが、すぐに見つかった…のですが、“届くまで1週間ほど”…とのこと。でも、いま取り組んでいるインタビュー原稿、実は〆切が、翌々日の朝イチ。これでは、まるで間に合わない…。
と言うわけで…
翌朝、開店時間に合わせて、最寄りの家電屋へ駆け込みました。
でも、ちょっとショックだったのは(まぁ、意外なことではないのですが…)、久々に覗いた、テレコ・コーナーの狭いこと。それも、フロアの隅っこに追いやられ、遠慮気味に4台あるだけ。
その中に、ずっと愛用していたモデルの最新版があったので、迷わすそれを購入。
で、上述のとおり、原稿〆切迫る…で、そのまま急いで帰宅しなければならない…ところ、久々の“その後の待ち合わせ等の予定なき外出”、そのまま帰るのが、何だか勿体ない気がしてきて…。
で、その家電屋の最上階まで行き、下の階まで、じっくり観察。
一番長居したのは、デジカメ・コーナー。実は、前々から欲しいコンパクト・デジタルカメラがあって。こちらもまた、最新モデルが出ていました。
外出時、見上げた夕空が、うっとりするような色に染まっていて、“ああ、この瞬間を撮っておきたい”…と思うことがよくありまして。でも一眼レフを、いつも持ち歩くわけにはいかないし。
500円玉貯金、そうとう溜まってきたので、近々買おうと思いながら、パンフレットだけ貰ってきました。
で、ひと通り観察し、御満悦になったところで、もういい加減、急いで帰宅しなければならない…のに、いつの間にか、ああ、近くの映画館に吸い込まれ…。で、時間がちょうど良かった(…そうしてずっと観たいと思っていた)『ハナミズキ』を観てきました。
いえいえ、物語にも俳優たちにも、まるで興味はなく。実はこの中に登場する、カナダはノヴァスコシアの町並みと、あの美しい灯台を眺めたくて…。
でも映ったのは、ほんの一瞬。映画のハイライトのひとつ…のはずなのに、残念ながら、その魅力は伝わらず。登場人物の描写も物語自体も、すべてがボヤけていて、がっかりでした。
こういうタイプの映画、あの行定勲氏(『世界の中心で、愛をさけぶ』『クローズド・ノート』など)なら、もっとうまく料理したろうになぁ…とふと思ったり。あの監督は、平凡な原作でも、見事な映画に仕立ててしまう、魔術師みたいな人だから…。
ぶつぶつ〜。
で、いよいよ帰宅せねば…
…と言うのは分かっていたのですが、でも、気がついたら、今度は近くのデパートに吸い込まれ。で、好きな洋服屋、あれとこれとをチェック。
その中で、あるファースト・ファッション店で、物凄くカッコいいライダーズ・ジャケットを発見(毎年のことながら、またライダーズだ…)。それも所有していないような、独特の色味が計3色。おまけに合皮だから、物凄く安価。全色揃えても、本革には遠く及ばないような、そんな驚くような値段。
でも合皮って、どうなのだろう。湿気の高いこの日本で、蒸れないか? 型崩れは? 色落ちは? 革のような風合い、出ないんだろうな…。あれこれ考え、ちょっとペンディング。繊維会社勤務の友だちに、まずは今夜、聞くことに。
そう、どんなに安価なものでも、望まないものに対しては、1円だって使いたくないし、家には入れたくない。
で、何はともあれ、今度こそ帰路に…
…の前に…円高還元とやらで、あれこれ安くなっている、向かいの輸入雑貨店に、思わず吸い込まれ。
結局そこで、紅茶の葉をどっさり購入(アールグレイ、オレンジペコ、チャイ、ピーチ&洋ナシ、ダージリン、モーニング)。ついでに、お供に合いそうなクッキーも数種。
最後に、レジへ向かう途中に目が合ってしまった、カナダ産のハチミツも(カナダ産だから、絶対に美味しいと思いつつ。実際、美味しかったぁ〜♪)。
最後に、夕食の買い物。
たまらなく生姜焼き気分だったので、豚肩ロース肉を購入。たまたま夕方のセール時にぶつかり、そうとうラッキーな値段で。
で、会計を済ませ、店を出ようという瞬間、“あっ、生姜、買い忘れた”。
…で、また店内へとUターン。
そうして…やっと…いよいよ…帰路に……。
結局、原稿書
を再開できたのは、食後、生姜焼きが腹の中に納まってから。
せっかく朝イチに家を出てまでして、テレコを手に入れたと言うのに…。
よって……
夕飯の後片付けをする→雨戸を閉める→歯を磨き顔を洗う→寝間着に着替える→パソコンに向かう→鳥たちが囀り始める→空が白み始める→新聞配達員のバイク音がする→原稿やっと書き終える→見直し&入稿する→部屋着に着替える→雨戸を開ける→新聞を取り込む→歯を磨き顔を洗う→朝食の支度をする……。
貫徹。嗚呼。
それでも、やっぱり…
家電屋は楽しいし、デジカメも映画も洋服も食糧も、観たり買ったりするのが大好きだから、こればっかりは譲れないわけで。
だから、そもそも、1日24時間しかない…というのが、最大なる問題なのだ…と言う結論に達したり…。
で、そうそう、今日の本題のテレコですが——
最新モデルだけあって、音も使い勝手も、10数年前のモデルよりも、遥かに素晴らしく(まぁ、当たり前と言っちゃ当たり前ですが…)、気持ちよく仕事ができ、とても得した気分であります。
やっぱりテレコは最高です。石器時代とか北京原人とか、なんと言われようと……。