屋根裏の住人たち
【【第一章】】
半年ほど前から、屋根裏で、
“ナニか”…が…
ドカドカ駆けずり回る足音、していました。
それも…ほぼ毎日のように。
「近所のネコ達が、侵入しているのだろう」
「ったく、うるさいなぁ」
「外で遊べばいいのに」
そう暢気に思っていました。
…と…ところが……
先日……
原稿書きの為に、早朝起きした…ところ…
また例の、ドカドカ足音が…
「今日は、朝から、絶好調だなぁ」
「まるで運動会やってるみたいだ」
慎之介さん&ねねちゃん(=同居のネコ達)、
外を見ながら、ソイツ等を威嚇…して…いる。
それまでグーグー寝ていたのに、
シッポをピロンピロン、口から泡吹き吹き、凄い興奮ぶり。
「ったく、元気だよなぁ、近所のネコ達」
またまた暢気に構えながら、
でも…念の為…カーテンを開けてみた…
と…ところ……
外で…
屋根の上で…
楽しそうに…戯れている…
その“ナニか”が……
い…いたぁぁぁぁぁぁ!!!
不気味なほどに美しい、
満月の夜。
寝静まり返った、
隣近所。
暗闇に、目の焦点、合わせる。
グッと、凝視する。
と……
まず見えたのは……
その後ろ姿。
背中は、グレー色…か?
し…しかし…
う…うっ…太ってる。
でも……あれっ??
「ネコとは、まるで、違うなぁ…」
「あっ、2匹いるゾ!」
と、その時、ソイツ等が……
………ふ…振り返った!!
その瞬間、その顔が…
月明かりに照らされた、その顔が……
よ〜く……見えたの…だった!!
顔の真ん中に、し…白いタテ線。
そうして…目は……赤色。
「ちょっとアンタ、な〜に見てンのよ〜〜」
…そう言われる、このあ・た・し。
「って……は…はっ???」〜〜(?_?)(?_?)(?_?)
「ゲッ〜〜!!!」
「なんじゃ、コレ???」
「こりゃ、ネコなんかじゃないゾォォォォ〜〜!!!」
「○◇▽#*※〒(゜.゜)(・。・;(@_@;)\(◎o◎)/!?!!」
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
は………は…く…び…し…ん〜〜〜〜〜!!!!!!!!!
その瞬間……
気を失いそうになる…
この…あ・た・し。
気分は、一気に、
原稿書き…どころでは…なくなる。
さあ、どうする、我が家………☆☆☆〜〜〜
≪続く≫
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【【第二章】】
不気味なほどに美しい、
満月のあの夜……
“ソイツ”が、振り返り、
目が合い、
そうして、その正体を知り、
気を失いそうになった、
このあ・た・し。
しかし……
気を失っている場合ではないゾ…と、
立ち上がり、気を取り直し、
さっそく、市役所へ、駆け込んだ…
…ところ……
「あっ、こんにちは、
ああ、はいはい、
まあ、あなたも、
ええ、それはそれは、
どーも、どーも」
……市の職員、
反応、いたって冷静そのもの。
「顔の真ん中に白いタテ線があって、
目がギラギラ真っ赤で、
こっちの顔を平気でジーッと見てたんスよ!!」
身を乗り出し、
泡を吹き吹き、
一気に捲くし立てる、
このあ・た・し。
それでも…
市の職員、
態度、変わらず。
「ち…ちょっと……
あ…あの……
い…いいですか……
顔の真ん中に白いタテ線があって、
目がギラギラ真っ赤で、
こっちの顔を平気でジーッと見てたんスよ!!」
…まるで、壊れたLP。
(↑ すいません、たとえが、モロ昭和で…)
しかし……
よくよく聞いてみると……
同市だけでも、
年間ざっと、
30軒からの“相談”がある…のだとか。
「えっ?? そーーなんですか!?!?」
ヘナヘナ。
身体中の力、一気に抜ける、このあ・た・し。
因みに、この窓口、
ハチも白アリもタヌキもアライグマも、
一気に、引き受けている課。
つまり…
“こーいうイキモノ”は、お手のモノ。
で、で、結論は、こう:
市が派遣してくれる、専門業者が、
追い出し+屋根裏のウンコなどの処理+消毒を、
タダで請け負ってくれる…とのこと。
その全行程、およそ1-2時間ほどの作業…なり。
因みに…
殺処分は、
特別な許可がいる…とかで、
市ではやらない…そうな。
外来種&害獣&SARSの元凶(…らしい)ったって、
それでも、こちらの思いは、ちょっと微妙。
そうとう複雑……だもの。
“オレらだってさっ、好きでココにいるわけじゃねぇーし!”…と、
彼らにだって、それなりの言い分、あるだろうし……。
だから、この処遇を聞き、ホッした…
…と言うのが、正直なところ。
それが正解かどうかは、さておき…。
あっ、そうそう、
これまた余談ですが……
彼ら(=鼻に白いタテ線…の彼ら)は、通常、
近所の家を、3-4軒、
行ったり来たりしている…のだとか。
ああ、だから、その日によって、
バタバタ騒々しかったり、
シーンとしていたり…なんだわなぁ。
納得。
しかし、なんだなぁ…
3-4軒…だなんて、
けっこう優雅だよなぁ〜〜
…なーんて言ってる場合ではないが……
で…あっ…そうそう……
その後のこと、
つまり、
彼らの出入口の確認&封鎖は、
プロの大工さんに頼まないと、
いけないのだそうな。
って……
え…えっ??
ふ…封鎖???
「“封鎖”…って、いま、言いましたよね?!?!」
ムフフフフッ〜〜!!!
“タッ・タッ・タッ・タッ・ターラッ!!”
織田裕二の顔を、思い浮かべ、
“あの”曲が、頭の中、グリングリン鳴り響き、
“その日”が、
一気に、楽しみになって来た、
このあ・た・し〜(^_^)v
と言うわけで……
数日後、
いよいよ最終章へと突入…なのであった。
いやはや〜。
≪続く≫
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【【最終章】】
封鎖〜♪ 封鎖〜♪ 封鎖〜♪
市役所に駆け込んだ、あの日以来、
頭の中は、
踊る大捜査線……の…このあ・た・し〜(^_^;)
そんなこんな、している内に、
数日後、
その日が…
来た〜〜〜っ!!!
朝8時半、起床。
封鎖〜♪ 封鎖〜♪ 封鎖〜♪
こちらも、準備態勢に入る。
そうして、9時半。
“ピンポーン!”
市から委託された人たちが、
約束どおり…
来た〜〜〜〜〜っ!!!
専門業者2人、
&ウチの建て替えの時に、お世話になった、
大工さん1人。
で…でも……
彼らは……
織田裕二のように、
カーキ色のコート肩にかけ、
凛々しい顔で、
駆けつけた……
…のでもなく……
ゴースト・バスターズのような、
格好をしている……
…わけでもなく……
ごくごく…普通の、
作業服を着た、
ごくごく…普通の、
お…おっちゃんたち……
……なのであった〜〜(^_^;)
仕事道具も…
脚立&ほうき&ちりとり&懐中電灯&ハサミ&ゴミ袋。
うーん…
ごくごく普通のモノ…ばかりだっ。
うーーん、
でも、とにかく……
「こんにちは」
「よろしくお願いします」
挨拶、交わす。
「ハクビシン〜♪ ハクビシン〜♪ 封鎖〜♪ 封鎖〜♪」
本当は内心、ワクワク・ワクワク。
でも一応、大人の態度、とってみせる。
で、まずは、
風呂場の脱衣場へ、御案内。
脚立を登り、
屋根裏を、覗き込む、
業者のひと。
すると、すぐに、上から、声が、
した〜〜〜〜っ!!
「ありました! ありました!」
「な…なにが、あったンすか??」
…天井裏を、見上げる、このあ・た・し。
ガサゴソ・ガサゴソ。
そして、すぐに、
“ナニか”で一杯になった、
ビニール袋を片手に、
戻って来る、業者のひと。
ウ…ウ…ウ………
山盛りの……
ウ…ウ…ウ…ウ………
ウ・ン・コ!!(^_^;)
「ゲ…ゲ…ゲ〜〜ッ!!」
⇒⇒なんか、ネコのソレと、同じ感じ。
興奮しながら、
デジカメで接写する、このあ・た・し。
「写真は、色々と撮っているけれど、
これは、考えてみれば、
記念すべき、“初ウンコ”…だなぁ…」
えへっ。
次に、
ちょっと離れた、トイレへ。
そうして、また、
屋根裏を、覗き込む、
業者のひと。
「お〜〜っ! ここにも、ありました! ありました!」
ふたたび、
ウンコ一杯の、ビニール袋を片手に、
戻って来る、業者のひと。
「す…すご〜〜っ!!!」
ふたたび、興奮しながら、
デジカメで、ウンコのブツ撮り…アップ撮り。
業者:「こんな量のウンコ、初めて見ますよ!」
「フ…フ…フッ!!」
⇒⇒ちょっとばかり、誇らしげな、このあ・た・し。
ちなみに……
彼ら(=顔に白いタテ線…の彼ら)は、
決まった場所へ、トイレする…のだ…そうな。
けっこう几帳面で、キレイ好き…らしい。
…なーんて、感心している場合ではないのだ。
なんたって…
そうやって、決まった場所にするから、
最悪の場合、
その“重さ”で、
天井が抜け落ちる…ってことも、
時にはある…のだそうだから……。
こわっ。
で……
そんなこんなで、
屋根裏のウンコ処理&消毒、
あっという間に、
——終了。
最後に…
彼らの苦手な、柑橘系のスプレーを、
あちらこちらに、吹きかける。
で、一方、外では……
大工さんが、
トントン・トントン、
縁側の下やら、屋根瓦の横やらにある、
ちょっとした隙間に、
網をかける作業。
そうして、そうして……
11時半。
全任務、滞りなく、
——完了。
で……
速やかに、車で引き上げていく、
織田裕二でもなく、
ゴースト・バスターズでもない、
ごくごく普通のおっちゃんの、
……業者のひとたち&大工さん。
あっ…そうそう……
彼ら(=鼻に白いタテ線…の彼ら)、
この時は…
留守だった……模様。
だから結局…再会できずじまい。
ちょっとばかり、ガッカリ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そうして、いま……
驚くほどに、静まり返った、
我が家。
慎之介さん&ねねちゃんも、
時おり、チラチラと、
天井や屋根裏を、眺めては、
心なしか、
寂しそう……なのは、
このあ・た・しの、
気のせい…か……。
原稿書きの合間、
ふと、カーテンを開き、
上空を見上げてみる。
初めてソイツらと、目が合った、
あの時も、
こんな静まり返った夜…だったなぁ…と。
でも、いま……
屋根の上に目をやるも、
そこには、ソイツらの、
姿は…なく……。
不気味なほどに美しい、
満月のあの夜、あの瞬間、
目が合った、
あの彼ら……。
あのふたりは、いまごろ、
どこで、どーしているのだろう。
元気なのだろうか。
冬空の元、凍えてはいないだろうか。
「にーたん、入口が封鎖されちゃったみたい」
「あっ、ほんとだ!」
「あたいたち、これじゃあ、入れないね」
「うーん、じゃあ、別宅の方へ行くか」
「でも、あたいたちの荷物、どーする? 中に置いたまんまだよ!」
「うーん、諦めるしかないなぁ」
「住み心地のいい家だったのにねぇ、にーたん」
「そうだなぁ。でも仕方ないよなぁ、哀しいけど」
……な〜んて言ってはいないだろうか。
元気なのだろうか。
どこかで、元気で、暮らしているのなら、
それでいいのだけれど………。
≪≪完≫≫