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動物たちの宴会

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通訳・翻訳者リレーブログ

先日いきなり、ぽっかりヒマになってしまった時、思い立ってしまったのでした。

“そうだ、カメラをお供に、動物園へ行こう!”

さっそく開園時間を確認すべく、園のホームページを開いてみる。そうして翌日の予定表をクリック。その瞬間、目に飛び込んできた一文に、思わず固まってしまった。

いわく:
11:30am—ハキリアリの食事タイム。

ハ…ハキリアリの…ショ…食事タイムですとぉ??

食事って……彼らはな…なにを食べるんだ?
砂糖? そりゃ当り前すぎ…か。
ならば…米粒…とか?
いや待てよ…もしかして…ミドリムシ…みたいな??

でも、“ハキリ”ってゆーくらいだから、主食はやっぱり、“葉っぱ”なんじゃないか? ああ、そうに違いない!
で、彼らが、土の上とかアリ塚で待ち受けていて、飼育係に投げてもらったその葉っぱを、うまくキャッチして、で、キャッチできた者から順に、その葉っぱをくわえながら、それぞれの巣へと持ち帰って、で、家でカリカリ食事タイム。

ああ、まあそんなところだろう。
葉っぱをくわえた彼らが、列を成し巣へと向かう図、テレビや写真でよく見かけるし。この間観たばかりの、ペリカンの食事タイムも、そんな感じだったし。まあ彼らの場合は、葉っぱではなく生魚で、アリ塚ではなく、池&その周囲だったけれど。

でもペリカンたちは、口を開けながら待っていたけれど、ハキリアリはどんな顔しながら、待っているのだろう?

まあ、それは行っての楽しみだ。
ああ、ほんと楽しみだなあ。

しかしだ、だとしたら、早めに行って、前の方の席を陣取らないと、ちゃんと見れないだろうなあ。なにせ、相手はアリだ。ちっちゃいから、後ろにいちゃ、そのパフォーマンスは見えないだろう。
けど、その会場に人間の子どもがワンサカいて、“そこの大人、見えないので、後ろの方に下がってもらえますか?”なーんて、ありがちなこと言われたら、どーしよー。ああ、こういう時って、大人は損だよなあ。

とにかく、早めに行こう。20分くらい前には、着いてた方がいいだろう。
じゃあ、早めに寝ないと…。そう決心したのに、あれこれ想像し始めてしまったモンだから、半端でなく興奮してしまい、その夜なかなか寝つけなかったのでした。

ああ。

…と、前フリが長くなってしまいましたが。
さて、いきなり翌朝。当日です。

思いっきり張り切ってしまい、食事タイムの1時間前に、現場到着。
で、さっさと昆虫館へ直行。

さあ、まずは入口にいる、あたしのいとしのナナフシさまに、ご挨拶。

仮面ライダーは(…って、年代がバレてしまうなあ。まあいいや)、この辺の子たちが、モデルになってるんだろうな。
改めて魅入ってしまう。

その彼らも、こっちを眺めている。んんん〜、かわいいなぁ〜〜。

そういえば、巨大なナナフシ摘まみながら、とびっきりの笑顔を見せていた女の子が、ちょっと前の新聞に載っていたが。あれはフィリピンだったか。羨ましい限りだ。あたしもいつか行ってみたいな。
しかし、あんな巨大なナナフシさま目の前にしたら、奇声あげてしまいそうだ。いや、いきなりパタリ失神してしまうんじゃなかろうか。ああ。

それはさて置き…。

ナナフシさまたちに、別れを告げ、お次は同じブロックに棲む、他の子たちだ。

このカラフルな子は誰? ↓

それからこれは? ヒント: あの嫌われ虫の、それも世界いち大きな種。

↓↓

さあ、なーんでしょ?
あっ、いま食事中の人は、目をお瞑りくださいな。
ゴキブリの嫌いな方も、ここから10センチほど、一気に↓スクロールしちゃってくださいませ。のちほど、下で会いましょう。

って、あっ、いま正解を言っちゃいましたね。

そう、世界いち大きなゴキブリであります。

しかししかし、彼らばかりがナゼにこうも、人間に嫌われているのでしょう?
ウチに出現しただけで、ナニもしていないのに、ギャーギャー叫ばれ、思い切り潰され、火あぶりにされ…。

同じ昆虫館に棲む、コウロギ&スズムシたちと、ルックスはそう変わらないのに…。なんだかとても不公平だ。
ゴキブリたちも、美声でリンリン歌えたなら、一族の運命もガラリ違っていたのでは…。などと考えると、思いはとっても複雑。ヒトって、罪深いよなあ。

それはさて置き、ぼちぼち行かねばならぬ時間だ。ハキリアリの処へ。

その前に、もうひとつだけ。美しいチョウたちの御姿を。

…さあ、本当にいよいよ、本日のメイン・イベント。ハキリアリの食事の時間です。

ああ、ドキドキするなあ。

その住処は、すぐに見つかった。
うーーん。すごい数のアリたちが、歩き回っているゾ!
しかし予想に反して、待ち構える観客は、ひとりもいない。ひとりも。
時計を見ると、25分前。ちょっと早過ぎたか。だからその場をいったん離れ、同じブロックにいる、カブトムシやクワガタなどを見て回る。

そうして10分前。ふたたび彼らの住まい前へ。
しかし、まだ人っ子ひとり、いない。
まあ、このまま此処で待つとするか。待っている間、住処の様子を改めて観察する。
あっ、背後に小さな扉があるゾ! あそこから、担当の人が現れるんだな。砂糖か米粒かミドリムシ小脇に抱えながら。それを手掴みで、パパパッと、アリたち目がけ、振りまくんだな。よしよし。

想像しただけで、ゾクゾクしてきた。

し…しかし…それにしても…静かだなあ。
恐れていた子どもの群れも、まるで現れやしない。今の子たちは、虫には興味ないのか?

はてな。もしや、あたしの勘違いか?
少しばかり不安になり、その場でスマホ取り出し、ホームページを開いてみる。あっ、確かに“11:30—ハキリアリの食事タイム”と記載されているよ。

じゃあ、いいんだ。
それにしても、おかしいなあ。

あっ、もしかして、大きな会場でやるのか? ああ、そうに違いない。なんたっ

、ハキリアリの食事だモンな。一大イベントだ。なんでさっさと気づかなかったんだろう。ハキリアリの代表が、ここから別の会場へ移動させられ、そこで“パフォーマンス”するに違いない。
で、慌ててそばの小ホールの扉を引く。が、しかし、カギがかかっていて、びくともしない。

おっかしいなあ。もしかして、スタッフが忘れてるのか? いや、まさか。こんな大イベントを、忘れるなんてあり得ない…。

そんなこんなしている内に、時計を見たら、予定の時間を10分も過ぎている。なのに辺りは引き続き、静まり返ったままだ。

なんだか、やっぱり、様子がヘンだ。だから意を決して、昆虫館のスタッフを探しに行く。
するとすぐに、「STAFF」と書かれたTシャツ着た、ひとりの女性を発見。

その彼女に訴えるあたし:
“あの…す…すみません。ハキリアリの食事の時間、予定を15分も過ぎてるんですけど”

するとその女性: “はっ? えっ? い…いま、担当を行かせますね。し…しばらくそちらで、お待ちください”

気のせいか、少し引き攣った顔している。そんなに切羽詰まり感強かったかなあ、このあたし…。まあ、いいや。これで来てくれるだろう。で、いよいよ、ハキリアリの食事の様子を、目撃することになるのだ!

うーん、ワクワクするなあ。

速やかに、彼らの住まい前に戻る。
その2分後、担当の方…とおぼしき方、現れる。

いよいよ…だなっ!

張り切るあたし: “す…すみません。ハキリアリの食事の時間、ずっと楽しみに待ってるんですけど、もうとっくに時間すぎてるんですけど、まだ始まらないんですけど”

すると、この温和そうなミスター昆虫博士、何も知らない哀れなオンナ相手に、やさしい言葉で、ゆっくり説明をし始めたのだった。

“ねぇご覧なさい、こちらの木を。先ほど立てておいたのですが、ほらねっ、こうして数匹で細かく切り取っては、向こうへ運んでいってるでしょ?”

“ちなみにこの隣の木は、今から2時間ほど前に、立てたものなんですよ”。そう言いながら指差したその木は、ほぼ丸坊主の状態だった。

中型アリが、葉っぱ切り係。その側にいる別の小アリたちは、葉っぱ切り係に寄生虫がつかないようにする、追い払い役。
切り取られた葉っぱは、運び屋のアリたちが、細い通路を伝って、左手のスペースまで担いで行く。
途中にいる大柄のアリたちは、パトロール隊。
葉っぱが運ばれる先には、別の小アリたちが待機。その彼らが糞などをつけながら、運ばれてきた葉っぱを発酵させ、キノコを栽培する。
周辺にいる小アリたちは、そのキノコ畑を監視する見張り兵。
近くには、貫禄の女王アリの姿が。そうして別室には、白い幼虫たちも。
さらに、キノコ栽培の作業過程で出たゴミを、収集する場所もあり。そこにある程度ゴミが溜まると、担当博士(=ヒト)が、まとめて捨てている…のだとか。

ひ〜〜ひ〜〜〜ひええぇぇぇええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!!!!
雄たけび上げそうになる、このあたし。

あれっ?? でも、待てよ!
するってーと、彼らがせっせと運んでいる、あの葉っぱは、“食糧”ではないってことか?!
じゃあ食事の時間に、砂糖を握り締め、あの小さな扉から登場する…はずの…ハキリアリ博士は??

はっ????

ナ…ナニが……ナンだか……。

すると、どこまでも優しいこの昆虫博士:  “こんな説明で、大丈夫でしょうか?”

し…しかし…

大丈夫かどうかすら分からないくらい、頭の中が真っ白のこのあたし。どんな質問すれば良いかすら分からず、仕方なくドサクサに紛れて、言ってしまう:

“あっ、はい、大丈夫です! よく分かりました! どうもありがとうございます!”

そうしてニコニコしながら去ってゆく昆虫博士の、その背中をボー然と眺めながら、引き続きしばしその場に佇むのだった。

へなへな。

急にどっと疲れが出てきた。口の中が、カラカラだ。
だから近くの食堂に駆け込み、まずはカキ氷でクールダウン。本日の気分は、王道のイチゴ味。その後に昼食。今が旬の冷麺を。

と、そんなこんなしている内に、もうひとつの楽しみ、可愛いペリカンの食事タイムだ。

食堂を後にし、近くの彼らの住まいへ。で、静かに待っていると…

“あぁぁあ、今日はさっ、エラく蒸し暑いっし、あんまハラ空いてないっし、けどくれるってんだから、もらうっとすっか〜”

ガヤガヤ・ガーガー、そんなこと言いながら、ペリカンたちがお尻フリフリ、4-5人の集団で、食事処へとやってきた。

しかしやっぱり、半端でないこの暑さゆえ、それぞれがその場に立ちんぼ、口をガバッと開けたまま。

“ココに入ったら、食べっけどしゃっ!”

川に落ちた生魚は、迷わずお見逃し。
“水にわざわざ入るの、メンドーだししゃっ!”

周囲で待ち構えていた、野生のサギたち。その様子を見て猛ダイヴ。沈んだままの魚たちを、凄い勢いで横取りする。

そうしていつもよりも早く、さっさと解散。

さてと、最後はキリンの食事タイム。これ実は初体験。なにをどーやって食べるのだろう。ワクワク。
彼らの住まいは、ペリカンのお隣。というわけで、いつも食事が置かれている、カゴの下へ。食堂はここだろう。たぶん。

で、ひたすら待つ。待つ。待つ。
待つ内に、予定の時間は、いつの間にか過ぎている。

あれれっ?
もしかして、このカゴで食事するんではないんか?
慌てて、周囲の様子を見てみる。

あ、ああ! いたっ!
遥か向こうの方で、食事タイムが始まってるじゃあーりませんか!
慌てて丘の上の彼ら目指し、一気に駆け上がる。

バタバタ、ゼーゼー。
焦・焦・焦。

すると、むにゃむにゃ食事中のキリン4人組が(のちに彼らは、親子だということが判明する)、一斉にこちらを見る。

“ねぇねぇ、そんな急がんといて。アタイたち、しばらくここで、食べてっから。どこにも行かないっから”
むにゃむにゃ、むにゃむにゃ。マイペースなファミリー。

“今

は最初っから、ゆっくり見においでね!”

あっ、はいっ。またちょくちょく来ます。
ほっこりした気持ちで、夕方、動物園をあとにする。

Written by

記事を書いた人

サイトデフォルト

高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

END